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もっと知りたい!不動産マーケット File.2

もっと知りたい!不動産マーケット File.2

File.2 コロナ禍の不動産市況②
新型コロナの影響は、不動産にも及んでいます。今回は、家賃収入の減少による不動産価格下落について詳しく見てみましょう。

週刊かふう2020年9月4日号に掲載された内容です。

家賃収入減少が不動産価格下落に及ぼす影響

 前回のお話で、家賃収入の減少がおこり収益性の低下による不動産価格下落というシナリオは非現実的とはいえないというお話をしました。
 今回はこれを少し具体的に見てみましょう。
 不動産を評価するときの手法にひとつとして収益還元法という方法があります。これは次の式により求められます。

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 留意点として、不動産の査定では純収入(家賃収入等から不動産経費を差し引いたもの)ではなく総収入(家賃収入などの収入のみ)で査定を行う場合もありますが、不動産鑑定では純収入で評価するのが通常です。
 この手法を応用して家賃の減額を受け入れたときどれくらい価値率が落ちるのかシミュレーションしてみましょう。
軽量鉄骨造のコンビニエンスストアを想定し、10年間の収入合計を求めます。

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 上記と同じように想定し、家賃の20%を半年減額した場合は表2のようになります。

 細かい説明は省きますが、この2つの10年間の純収益の現在価値の合計を比較しますと、減額なしに比べて、20%を半年減額した場合には純収益の現在価値の合計は約3.8%少なくなっています。
 純収入が減少しているので、上記で示した収益還元法を適用してみると利回りにもよりますが、収益価格が下落することになります。
 この収益還元法を適用することによって、家賃の減少や空室の増加が不動産の価値にどれくらい影響するのかを具体的な価格として求めることが可能になります。
 この収益還元法は投資物件の価格を査定する場合に非常に有用ですが、同じ収益還元法でも物件によっていくつかの種類があります。この話はまた別の機会にしたいと思います。

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売上に対して家賃が10%超は危険信号

 家賃の減少や空室の増加が不動産の価値を落としてしまうのはイメージとしてあると思いますが、この収益還元法という手法によって具体的な価格として求められることがわかるかと思います。
 ちなみに事業を行うにあたって、支払う家賃が売上の10%を超えてしまうと営業を続けることが厳しくなります。コロナ禍の影響で売上に対する家賃割合が10%を超えてしまうような状況が続くようだと営業の続行は厳しい状況にあると考えていいと思います。
 収益性が高ければこの家賃の減少に対する価値率の下落はさらに大きくなることが考えられますので、事業計画のとおりに運営がうまくいかないこの状況では収益価格は下落するしかないのです。
 このようなことから不動産価格の下落、とくに商業地における不動産価格の下落は十分に考えられるのです。
 住宅については商業地ほど収益性が重視されるわけではないのですぐに下落ということにはならないと思いますが、コロナの影響が長引けばやはり下落するという可能性は出てくると思います。

 次回もコロナ禍の不動産市況について考察してみたいと思います。

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