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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

リビングとデッキをフラットにつなぎ、室内外を一体化

　ぽっかりと開いたコンクリートの大きな口が、宙に浮いたようなファサードが印象的。日が当たると真下にある駐車場には大きな影だまりができ、機能面ではこの大開口が筒の吸込口のような役割を担って、フレッシュな光と風を室内へ呼び込んでいます。
「計画当初は特にこだわりもなく、オーソドックスな家のイメージしか頭になかったんですけどね」とは施主のＨさん。「でも建築士さんが頑張っていろいろ提案してくれて。やり取りを重ねるうちにアイデアの幅も広がり、おかげでデザイン面でも住み心地の面でも納得のいく家ができました」。大通りから一本中に入った住宅街。家づくりにあたり、相談に訪れた建築会社から「同年代だしフィーリングが合うだろう」と紹介されたその建築士とは、紹介者の想像以上に相性がぴったりでした。
　大きな口の内部にあるのは、ＬＤＫを中心とした生活のメインスペース。リビングとデッキテラスは床がフラットにつながり、窓をフルオープンにして室内から筒の外を眺めれば、住宅街とは思えない開放感が得られます。リビングから２ｍ超張り出したデッキテラスは、両サイドと頭上をコンクリートに覆われた半屋外空間になっており、多少の風雨があっても問題なし。室内に差し込もうとする日射も和らげてくれます。
「住み始めたのは昨年の夏。西日に悩まされたことはほとんどなく、台風時もまったく影響がありませんでした」。そんな懸念をはるかに上回る快適さが毎日継続し、「家の中はとにかく風通しが抜群。キッチン脇の戸を開けると、デッキから舞い込んだ風が水回りを抜けて敷地東面の庭に流れ、本当に気持ちいいですよ」。

１階のフロア全体が団らんの場
たくさんの人が集まる家に

　具体的な間取りや意匠は徐々にイメージを膨らませていった一方で、最初からＨさんが漠然と思い描いていたのは「親戚や友人をはじめ、たくさんの人が集まれる家にすること」。だからリビングに併設する和室を小上がりにしたのは、椅子代わりに応用できることも理由の一つ。また壁掛けテレビを配した壁面には、腰掛けにもできるほどゆったりしたサイズのコンクリート製ボードを設けました。
「このボードがそのまま階段の一段目につながっているのは建築士さんのアイデア。壁と同化しているせいか階段の存在感が薄れて、室内がよりスッキリと感じられますね」。

　インテリアは奥さまの要望に従い、白を基調にした清潔感あふれるコーディネート。床や建具の木部もトーンを合わせて、ナチュラルな風合いの建材を採用しました。一カ所だけ趣が異なっているのは和室の床の間です。壁を柿渋和紙で仕上げることで空間にアクセントを添えるとともに、「床柱は以前の祖父宅にあったものを再利用してもらいました」。
　ウオークインクローゼットを含めた水回りの使い勝手のよさは、奥さま最大の満足ポイント。ＬＤＫから完全に独立したエリアにありながら、キッチンとは廊下を挟んですぐ隣の位置にあり、あらゆる家事が最短距離の移動でこなせます。さらにバスルーム脇に配置した坪庭や、一つの家具として造作したトイレの収納などが水回り自体の居心地のよさを高めています。
　２階は子ども室を２つ並べただけのシンプルな間取り。しかも「勉強して寝るだけの広さがあれば十分」との方針に従い最小限のサイズにとどめ、残りは屋上テラスに充てました。狙い通りに３人の子どもたちはほとんどの時間を１階で過ごし、フロア全体が団らんの場に。ご夫妻も思い思いにくつろぎながら、「家の中は気を抜ける場所。今は新築一年目でまだきれいな状態ですが、家族の成長とともに徐々に 味 が出てくるでしょう」と話し、デッキや和室で自由に過ごす子どもたちの様子を見守っています。