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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

木の健やかな香りと家族の笑顔あふれる 清澄感漂う無垢材の家

木の健やかな香りと家族の笑顔あふれる 清澄感漂う無垢材の家

DATA
設  計: 株式会社 琉球住樂
     一級建築士事務所
     (担当/伊良皆盛栄)
敷地面積: 386.43㎡(約116.89坪)
建築面積: 91.09㎡(約27.55坪)
延床面積: 121.86㎡(約36.86坪)
用途地域: 指定なし
構  造: 木造軸組工法
完成時期: 2022年10月
施  工: 株式会社 琉球住樂
    (担当/小波津敬・伊良皆杏奈)
造作家具: 株式会社 琉球住樂
   (担当/伊良皆沙彩・伊良皆杏奈)
電  気: 有限会社 山城商工
     (担当/照屋盛文・名城武則)
水  道: 有限会社 海西工業
内部建具: 有限会社 照屋木工所
外部建具: 株式会社 エクセルシャノン
外  構: 金勢造園
屋  根: スカイルーフ
左  官: 有限会社 仲松左官工業
  
内部大工: 真内装(棟梁/伊佐真司)
外部大工: 金城工業(棟梁/金城清正)

夫婦と子ども3人が暮らすCさん宅は、無垢材と漆喰をベースにした2階建ての木造住宅です。
家の中には清らかな光と空気が流れ、至る所が居場所になって自然と団らんが生まれます。
窓の外には遠く海を望む豊かな庭を持ち、「子どもたちにとって、この家と環境が”ふるさと”として記憶されてくれれば」と思える自慢のわが家になりました。

 

週刊かふう2024年11月29日号に掲載された内容です。

木の健やかな香りと家族の笑顔あふれる 清澄感漂う無垢材の家

匂いと肌触り、空気感に魅了され木造を選択

 なだらかな斜面に沿って家々が建ち並び、海が垣間見える住宅街。琉球石灰岩や南国植物に彩られた焼杉板の黒い外壁は、建坪28坪というサイズ感以上の存在感を放ち、「建築中から、散歩の足を止めてジッと見学していく方が多くいらっしゃいました。頻繁に声もかけられましたよ、陶芸家ですか?カフェを開くのですか?って」とご夫妻は振り返ります。敷地南面の庭から建物を眺めれば、朱色の勾配屋根が深い庇を延ばして雨端空間を形成し、伝統的な沖縄民家の趣をたたえています。
「計画当初は木造という選択肢はあまり頭になかったんですけどね」とご主人。「最初に魅力を感じたのは、匂いと肌触りの良さ。その後は学べば学ぶほど、沖縄の気候風土には木の家が合っていると思うようになりました」。

 Cさんが家づくりを始めたのは6年前。結婚直後から持ち家志向が強く、ご主人の実家近くの土地を早々に購入し、仕事のタイミングなどを見計らって本格的に計画に乗り出しました。程なくして依頼した建築会社と出会い、「高品質で知られる飫肥杉の無垢材をふんだんに使用しており、建物の断熱性も秀逸。そして何より、家に足を踏み入れた時の心地よい空気感に感動しました」。

 新居は2階建てでプランニングし、1階リビングと2階オープンスペースは吹き抜けで連結。LDKには迫力ある丸柱がそびえ、頭上には幾重にも梁が行き交い、どこにいても木組みの美しさが目に入ります。またリビングの隣には玄関を挟んで和室を置いた他、独立した個室を上下階に配置し、「海の眺望を楽しめるように」と各室の東面に開口部を設けました。一方で庭に向けては、LDKから雨端デッキを介して視線が広がり、縦横につながりを持つ開放的なレイアウトになっています。

木の健やかな香りと家族の笑顔あふれる 清澄感漂う無垢材の家

庭と家が風景の一部になり、豊かな町並みに貢献

 育ち盛りの子どもたちには、家全体が活動の場。畳間に座って勉強したりゲームをしたり、2階オープンスペースに上がったかと思えばリビングに下りて来てダンスをしたりハンモックに揺られたり、家中を元気に走り回ります。時には階段に腰掛けて、キッチン・ダイニングにいるご夫妻とおしゃべりすることもしばしば。2年前に新居が完成して以来、今も変わらぬ光景です。
「肌触りがいいから、椅子を使わずに体ごと床に預けてしまいたくなります。そのため以前と比べて、生活の目線が下がった気がしますね」。

 丁寧に組み立てられた動線や収納は、暮らしの質を高めてくれます。例えばキッチンは、「将来カフェを開くことが夢」と話す長女と一緒に使うシーンを想定し、大人2人がすれ違えるだけの作業スペースを確保。背面収納は手持ちの食器が無駄なくぴったり納まるように、担当者と密にやり取りを重ねて造作してもらいました。他にもミラーキャビネットを採用した造作洗面台や、愛鳥をモチーフにして陶芸家に制作を依頼したトイレの手洗いボウルなど、随所にこだわりを詰め込んでいます。

 居心地も抜群です。無垢の木と漆喰が生み出す空気感は期待通りに心地良く、「真夏でも普段はエアコン1台で十分涼しい。家の中が快適だと、窓を開けずに生活するようになるものですね」。それでも内と外をしっかり切り分けて、庭も積極的に活用しており、建築士がスケッチしたイメージをもとに植栽を整備。また奥さまは「大好きな園芸を思う存分楽しめます。花や緑をもっと増やしていければ」との展望を描いています。
 外塀のないオープンな外構のため、庭も家も風景の一部になり、豊かな町並みに貢献します。おのずと地域との関わりが育まれ、「子どもたちにとって、この場所が愛着のある”ふるさと”として記憶されてくれれば」とご夫妻。Cさん一家の明るく温かい雰囲気が敷地全体からこぼれています。


写真ギャラリー

木の健やかな香りと家族の笑顔あふれる 清澄感漂う無垢材の家

くつろぎ深い室内環境と、多目的に遊べる庭・雨端
屋外空間を含めた暮らし方を考える

飫肥杉の無垢材、漆喰などの自然素材と独自の断熱技術で、快適な温湿度環境を保つ
本当に必要なものを見極めて予算を分配。建築費高騰下のプランニングで大切なこと

一級建築士:伊良皆盛栄さん(中央)、一級建築士:伊良皆沙彩さん(左)、伊良皆杏奈さん

 100坪を超える敷地サイズと、いつでも家族の気配が感じられる居住空間。Cさんの要望を無理に室内に詰め込むのではなく、育ち盛りの子どもが3人いればおのずと屋外で遊び回るだろうと考え、当初から庭の使い方を含めて計画を進めました。

 敷地は東側に海を望む南東角地で、もともと最大約2メートルの高低差がありました。風水を意識しながら建物の配置や地盤面を決定し、駐車スペースに琉球石灰岩の石積みを並べて段差を解決。将来は玄関前まで車でも直接アクセスできるように、前面道路から緩やかなスロープを用意しました。また敷地南面の庭は完全にフラットには造成せず、多少の凹凸があったほうが遊び場には適していると考え、あえて既存の段差を一部残しました。

 新居のプランニングに際しては、伝統的な沖縄民家の形態を手本にしつつ、現代のライフスタイルも考慮して全体のバランスを整えていきました。具体的には、床の間のある和室はコンパクトに設計し、家族が集うリビング・ダイニングを広々とレイアウト。キッチンをはじめ水回りは北西側に集約すると同時に、ストレスなく効率的に動けるように各スペースの配置を決めました。

 飫肥杉の無垢材、漆喰、外装の焼杉板といった素材は、子や孫の代まで住み継げる家づくりのためには不可欠な、創業時から変わらぬ琉球住樂の標準仕様です。省エネ対策にも引き続き意欲的に取り組んでおり、樹脂サッシや外張り断熱など先進技術を利用しながら、沖縄の気候風土に適したMy断熱基準を算出。今回のCさん宅ではZEH+(ゼッチ プラス)の条件を満たし、使用するエネルギーを管理・節約するためのHEMSのシステムも導入しています。

 また折からの建築費高騰の影響を受け、Cさん宅でも大型ガレージを断念するなど、当初計画から変更・縮小した部分がありました。予算内に収めようと無理を重ねると、住み始めてから機能不全を起こしかねないため、優先項目の順位付けは不可欠です。多少のコスト変動を見越した上で、本当に必要なものにはしっかりと予算をかけ、全体のバランスを整えていくことが大切だと考えています。

設計・施工会社

南城市玉城字愛地697-1

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