ロングセラーズ by module #3 日本のミッドセンチュリーデザイン
週刊かふう2024年 1月19日号に掲載された内容です。
日本のミッドセンチュリーデザイン
バタフライスツール/柳宗理
チェントロソファ/剣持デザイン研究所
マルガリータソファ/ブルーノ・マットソン
低座椅子・中座椅子/長大作
図書館椅子/水之江忠臣
時代を超えて愛される家具
ミッドセンチュリーデザインとは、1940年代から1960年代にかけてアメリカで沸き起こったブームで、第二次世界大戦後に需要が高まった家具の生産量を増やすため、成型合板やガラス繊維強化プラスチックなどの新しい技術を導入して作り出されたシンプルでモダンなインテリアデザインのこと。
これまでにない自由なデザインの家具は、やがて復興の時代を迎えた北欧や日本など世界中に派生していきました。
沖縄では、宜野湾の国道58号線沿いの中古家具店などで基地の払い下げ品として販売されているミッドセンチュリーデザインの家具を見ることができます。イームズの椅子がビンテージチェアとして高値で取引されるなど、現在でも不動の人気!
老舗木工メーカーが実現した日本のモダンデザイン
アメリカのブームは日本のデザイン界にも影響を与えました。アメリカではチャールズ&レイ・イームズや、ジョージ・ネルソン、エーロ・サーリネンなどが有名ですが、日本では、柳宗理、剣持勇、渡辺力、長大作などの巨匠デザイナーが日本のミッドセンチュリーとしてジャパニーズモダンを確立します。
日本でこれらの作品が生まれた背景は、山形の老舗木工家具メーカーとして有名な天童木工の存在なしには語れません。薄くスライスした木材を重ねて接着し、熱を加えながら曲面を作る、北欧やアメリカで確立された成型合板の技術をいち早く取り入れた天童木工は、剣持勇や柳宗理らデザイナーが追求する美しく豊かな曲面を実現。数々の名作を生み出しました。
今回はそんな日本のミッドセンチュリーの代表的な椅子を紹介します。
バタフライスツール
当時、チャールズ・イームズと親交のあった柳宗理がその影響を受けて、天童木工の技術力を得て生まれたバタフライスツール。その名のとおり、蝶が羽ばたいているような座面のフォルムや、脚の曲面がまた美しい。ニューヨーク近代美術館、パリのルーブル美術館でコレクションされている。
チェントロソファ
剣持勇の構想をもとに国立京都国際会館のためにデザインされた名作。天童木工の3次元曲面成型合板の技術が生かされた構造材により、小ぶりで強度の高い構造を実現。固めのクッションで腰をさりげなく支える腰当はデザインのアクセントになっている。
マルガリータソファ
スエーデンの建築家ブルーノ・マットソンによる和室に置くための椅子。“畳ずり”という微妙なアーチ状の脚で畳を傷めない。しかも軽くて、丈夫で、座り心地もバツグン。一人掛けのリビングチェアを連結して、二人掛け三人掛けのソファとして使える。
低座椅子・中座椅子
“和室での暮らしに溶け込みゆっくりくつろげる椅子”という要望からできたジャパニーズモダンを象徴するデザイン。和室にも洋室にもフィットし、あぐらをかいても疲れない椅子。シートハイ(座面の高さ)は、低座椅子29㎝、中座椅子34.5cm。
図書館椅子
1954年に神奈川県立図書館の閲覧室用に作られた水之江忠臣の代表作。東京の国際文化会館にも納められ、その後1955年に商品化。目立った特徴のない普通な印象の、そう言われてみれば図書館にあったかも……というような椅子ですが、68年間もロングセラーを続ける、名作チェア!
※価格はいずれも『週刊かふう』掲載当時のものです