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アールーさんの相続・終活知恵袋 Vol.4 心に残る遺言書

アールーさんの相続・終活知恵袋 Vol.4 心に残る遺言書

遺言書は「自分の財産を誰にどのように残すかを決める書類」というイメージを持つ方は多いと思います。しかし、遺言書にはあまり知られていない役割があります。それは時に感謝や感動を与え、時には争続さえも解決してくれる、とてもハートフルなもの。今号はその役割について紹介させていただきます。

週刊かふう2025年8月8日号に掲載された内容です。

家族に伝えるメッセージ

 遺言には財産の配分を指定するだけでなく、家族への愛情や感謝の気持ち、そして自分の考えなども書くことができ、これを「付言事項」といいます。
 付言事項の内容は法的拘束力を持たないものの、この記載があるかないかは、 ご家族が遺言の内容を受け入れてくれるかどうかという感情面に大きな影響を与えます。私が遺言執行者として経験した相続人への遺言の開示(遺言内容の説明)での心に残っているエピソードを紹介させていただきます。

アールーさんの相続・終活知恵袋 Vol.4 心に残る遺言書

財産配分に偏りがある遺言の事例

 相続人は妻、子3名(長男・長女・次男)のご遺族で、被相続人は父親。生前は厳格かつ寡黙な方で、財産に関することも家族に話をしていない様子で遺言書を残していることにご遺族も驚いている様子でした。一方私自身は遺言の説明にあたり内心ひやひやでした。なぜなら長男に偏った配分であり、長女と次男の受取額が少なく不満が漏れるだろうと考えていました。

 実際に相続人全員の前で遺言を読み上げていくにつれて、長女と次男の表情が見る見るこわばっていくのが分かりました。しかし、遺言書の最後で被相続人が書いてくれた付言事項として、このような財産配分になった理由、財産配分が少ない長女と次男へのおわびや感謝の気持ち、家族全員等しく大事に思っていること等を読み上げたところ空気が変わりました。

 生前の厳格な父からは想像できない言葉たちだったのでしょう、家族全員が涙し、私が遺言書を読み上げた後もしばらく皆が言葉に詰まっていたあの光景が印象的で忘れられません。その後遺言に基づく相続手続きが非常に円滑に進んだことは言うまでもないですね。

アールーさんの相続・終活知恵袋 Vol.4 心に残る遺言書

アールーさんの知恵袋

 紹介した事例のように、財産の配分理由や、家族への想い、これから家族がどうあってほしいなどを付言事項として遺言書に付け加えるだけで遺された家族は本人の想いが理解でき、結果として争いを防ぐこともあります。逆にいうと財産の分け方にだけ注力し、付言事項を軽視すると結果的に争いがおきて遺言書通りの相続さえ叶わなくなるリスクもあります。遺言書の本来の目的のためにも、付言事項を考慮してみてはいかがでしょうか。

アールーさんの相続・終活知恵袋 Vol.4 心に残る遺言書

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