アール―さんの相続・終活知恵袋 Vol.8 「遺言執行者」の役割と仕組み

相続・終活の準備を進めていくなかで集大成といえるのが遺言書。自分の財産を誰にどのように残すかを決めるものです。しかし、遺言書は作るだけでは意味がなく、将来しっかりと遺言内容通りの相続が実現することで初めて意味があるものになります。その実現性の鍵を握るのが「遺言執行者」です。本稿では遺言執行者について解説させていただきます。
週刊かふう2025年12月12日号に掲載された内容です。
遺言内容を実現させる「遺言執行者」
遺言は、遺言を書いた人の死亡によりその効力が生じます。そのため、遺言を書いた人は遺言内容を実現させることを信頼できる誰かに託す必要があります。この遺言内容を実現させる者を「遺言執行者」といいます。
遺言執行者は必ず選任する必要はありませんが、その場合は相続人全員で手続きを進める必要があるため、相続人が多かったり、県外や海外にいる場合はスムーズに進みにくいことがあります。しかし、遺言執行者を選任していれば遺言執行者だけで手続きを進めることができます。
遺言執行者は多くの場合、遺言書の中で指定することになります。遺言作成にあたっては財産の分け方のみならず、遺言執行者を決めることも重要なことです。

遺言執行者のやること
遺言執行者は遺言内容を実現するためにさまざまなことを実行する必要があります。
代表的なことは次のとおりです。
①相続人全員へ遺言の開示
②金融機関での資料収集
③不動産に関する資料収集
④被相続人や相続人に関する資料収集
⑤財産目録の作成および相続人全員への交付
⑥各専門家(司法書士、税理士等)との連携
⑦財産の換価・名義変更の手続き
⑧相続人への各種報告(進捗、問い合わせ、完了報告)
⑨その他手続き期限の管理、相続人間の調整等
これらを基本的には一人で担うことになり、また相続税が発生する場合は10カ月以内に完了させる必要があります。期限に間に合わない場合は相続税を軽減できる控除や特例制度を活用できないことや加算税や延滞税などのペナルティーが科せられるリスクがあります。



