稲嶺さんの相続・終活知恵袋 Vol.13 「平均寿命」と「健康寿命」

寿命には「平均寿命」と「健康寿命」という考え方があります。終活や相続対策で大切なのは、自分の思いや希望をきちんと伝えられる「健康寿命」を意識することです。遺言などの備えも、元気なうちだからこそ進められます。事例から学んでみましょう。
週刊かふう2026年5月8日号に掲載された内容です。

よくある落とし穴
71歳のAさんは、県内でアパートや軍用地を複数所有する不動産オーナーです。配偶者と二人で暮らし、長男と長女はどちらも県外に住んでいます。Aさんにとって不動産投資は趣味でもあり生きがいでもあり、今も新しい物件の購入を考えるほど元気いっぱいです。
一方で、配偶者は以前から「そろそろ終活の準備をしてほしい」「子どもたちが財産の分け方で悩むのではないか」「相続税や納税資金は大丈夫だろうか」と気にしていました。
しかしAさんは、「相続対策が必要なのは分かっている。でも、まだ元気だし、終活はもう少し先でいい」と後ろ向きです。どこかで、相続の話をすることは死を近づけるようで縁起が悪い、という気持ちもありました。
ところが、準備を先送りしているうちに、Aさんは急な入院をきっかけに健康状態が悪化。退院後は以前のようには回復せず、物忘れや判断力の低下も見られるようになりました。その結果、不動産や預金の管理、各種手続きなどを自分ひとりで進めることが難しくなっていきました。家族は支えようとしますが、どこにどの財産があり、Aさんが誰に何をどう残したいと考えていたのか分からず、十分に対応できません。
その後、相続が発生。遺言書も作成していなかったため、遠方に住む子どもたちと高齢の配偶者だけでは整理が追いつかず、結局、すべての財産を法定相続割合のまま共有名義で相続することになりました。
しかし共有不動産は、管理や修繕のたびに全員の意見調整が必要です。今は何とか維持していても、このままでは将来、孫の代に共有者がさらに増え、ますます整理が難しくなるのではないかと家族は不安を抱えています。


