僕の好きな風景 第73回 写真のチカラ
座卓が鏡のように反射してその季節の庭の魅力を増幅させる
週刊かふう2023年7月7日号に掲載された内容です。
「インスタ映え」という言葉が流行って随分と経ちますが、建築の世界ではずっと前から「映え写真」というのは大事にされてきました。
「建築は写真で記憶される」と言って良いほど1枚の写真がその建築を長く歴史に記憶させるものなのです。
実際の建物は将来壊されても、写真は歴史に残り語り継がれると……。それくらい1枚の写真が魅力を持ち、多くの人々に伝播していくことがあります。
京都・瑠璃光院の「映え写真」も一般の方々の心をつかみ、魅了する写真ではないでしょうか?
2階の座敷に置かれた、鏡のように磨き上げられた座卓に映り込む庭の景色が、幻想的で多くの人々を魅了しています。
少し離れて俯瞰(ふかん)してみると、それほど不思議ではない風景なのですが、テーブルにカメラ(携帯)を乗せて写真を撮ると、その風景に引き込まれるかのような素晴らしい写真となります。
その1枚に瑠璃光院の魅力のエッセンスが凝縮されてしまいます。
もちろん、瑠璃光院の魅力はそれだけでなく、高低差を利用し、移動しながらさまざまな角度から庭を楽しめる構成は見事。
設計・施工は数寄屋建築の名手、中村外二。自然を借景とした庭園は佐野藤右衛門一統の作とのこと。
瑠璃光院は春の新緑の頃と夏、秋の紅葉の時の年に3回公開されています。
紅葉の時の映え風景も良いのですが、新緑の頃の緑色の湿気を帯びた空気もまた良い。
同じく京都の金閣寺などもそうですが、誰が撮っても美しい写真になる建築は、「建築の民主化」として大切なことなのかもしれません。
瑠璃光院を訪れた人たちは2階の座敷に置かれた反射する座卓にカメラを置いて「映え写真」を撮る