僕の好きな風景 第80回 性能と意匠の両立
住まいの中央に吹き抜けがあり、それが空気と熱の動きを司る
週刊かふう2024年2月2日号に掲載された内容です。
気候変動が顕著なものとなり、日本の住宅の高性能化・省エネ化が進んでいます。
先進国でありながら、日本の住まいは最も性能が低いと海外から後ろ指をさされていましたが、最近は日本でも断熱や気密への意識も高くなってきました。
これまで設計者の多くは、建築には性能より大事なこと(空間的な魅力)があり、高性能化に取り組むことで設計の魅力がなくなると考えている方が少なくありませんでした……実は僕もその1人だったのです。
しかし、寒冷地で設計を頼まれたことをきっかけに、高性能化に取り組んでみたところ、その心地よさに意識が変わりました。自分の設計のテイストが損なわれるどころか、むしろ、新しい設計の可能性が見えてきたのです。
それ以来、さまざまな性能向上のチャレンジを大学の研究室や施工者、メーカーと共に取り組んできた結果、自分らしい性能と意匠(デザイン)の両立ができるようになりました。
しかし、最近は建築費が高騰したため、より簡易で、普通の設備で性能と意匠の両立ができないだろうかと取り組んでいます。
それが床下エアコンによる床暖房と小屋裏エアコンによる冷房。
それぞれ1台の壁掛けエアコン(2.8〜4.0kw)で、ゆるやかな全館空調を実現する仕組みです。
暖房は床下にエアコンを吹き出し、冷房は小屋裏から各部屋に冷気を落とします(小さな換気扇で引っ張るとより確実)。
特に、日本の住宅の問題であった冬場の室内の温度差からくるヒートショックを、少ないエネルギーで解消できます。
高性能だから成り立つ仕組みで、この仕組みは広く普及しはじめています。
もちろん、季節の良い日はエアコンを切って、自然の風と空気を取り入れ季節を楽しむ……今の時代のバランスの良い住まいの性能を模索中。
冬は床下に半分埋め込んだエアコンで床暖房。別売りのセンサーが付いたコントローラーを利用することで安定して運転できる
夏は小屋裏に冷房を吹き出し、あちこちに開けた開口部から冷気を2階や1階に落としていく