僕の好きな風景 第83回 コンクリートの箱の中の木造
白い部分がコンクリートで、木造部分はその内側に架構が組まれている
週刊かふう2024年5月3日号に掲載された内容です。
琉球大学の学生だった頃、憧れ続けた建築家の一人が宮脇檀さん。
東京芸大の先輩であり、住宅建築家というジャンルを確立させた功績は大きい。
売れっ子の建築家として、住宅の設計はもとよりエッセイストとしての執筆業に加えて、大学での建築教育にも尽力された方でした。
学生時代、沖縄の片隅で宮脇檀さんを通して日本の建築界を知ることができ、その後の進路を導いてくれました。
その思いが通じたのか? 後に宮脇さんが教授を務めた大学で、非常勤講師として11年間、建築教育に関われたことは感慨深い。
その建築界のマルチタレントともいうべき宮脇さんの名作住宅の一つが、建築学会賞に輝く「松川ボックス」。
今ではギャラリーとして一般の方々にオープンにされています。
僕はこの住宅が宮脇さんの仕事の中で最も好きでした。
やっと実物を見ることができるとのことで、事務所のスタッフ全員を連れて、張り切って出かけたものでした。
当時の宮脇檀さんの設計の特徴でもある、混構造というコンクリートの箱の中に木造の軸組を組んだ不思議な構造の住宅です。
コンクリートで外部から内部の暮らしを守り、その内部に柔らかい木造で居心地の良さを創り上げる……という都市型住宅のボックスシリーズ。
そのボックスシリーズの中で気品と完成度に磨きがかかった仕事が松川ボックスだと思っています。
さらに、母屋とハナレで中庭を囲み、どこか韓国の民家を思わせるようなテイストも魅力の一つでした。
そして、天窓から降り注ぐ光は白いルーバーで拡散されて柔らかくなり、空間にやさしさを与えています。
憧れの建築は年老いていましたが、「気品」は熟成され、「コク」のある空間となり、滋味深い建築となっていました。
ボックスシリーズは都市型住宅に対する宮脇さんの回答だった。天窓は都市型住宅において必須の手法であった
トップライトから落ちてくる光が白い壁を柔らかく輝かせる