僕の好きな風景 第86回 美術館の庭に小屋を建てた
美術館の庭の大きな木の下に建つ小さな小屋。「湖畔の方丈」と名づけた
週刊かふう2024年8月2日号に掲載された内容です。
滋賀県立美術館にて、ただ今開催中の「滋賀の家」展に参加させていただいています。
滋賀県にて何件も住宅を設計していること、施工した工務店が美術館の支援活動を行っていることから、パネル展示に加えて、屋外展示もやってもらえないか? と急遽、実物大の建築に取り組むことになりました。
滋賀県立美術館のモットーは「リビングルームのような美術館」……屋外の展示物はアウトドアリビングのような位置付けで楽しめる居場所として考えてみました。
僕の提案は小さな小屋。
滋賀県の財産は、中心に位置する琵琶湖の存在。
過去に「琵琶湖湖畔の家」という住宅を設計していますが、その住まい手が今回のイベントのスポンサーでもある工務店の社長……彼がこの小さな小屋を琵琶湖が望める良い場所に建てて、くつろげるといいなあと思い「湖畔の方丈」と名づけました。
方丈というのは4畳半という意味。
昔、『方丈記』を書いた鴨長明が住んでいた住まいが「方丈」(4畳半)で最小限の生活空間。「湖畔の方丈」は4畳半の中に洗面とトイレも設え、造り付けのソファ、仕事用の小さなデスクもあり、いざとなれば小さな冷蔵庫も置けます。
もちろん、エアコンも取り付け可能……最小限のハナレとして活用するできることを狙いました。
美術館の庭の木の下にひっそり佇む小屋は関係者だけでなく、一般来場者にも好評……。
美術関係者のためだけの展示会でなく、「リビングルームのような美術館」のモットーにふさわしい、誰でも楽しめるイベントとなるように思います。
*「滋賀の家」展は9月23日まで滋賀県立美術館にて開催中。
メイン開口が出入り口となる。網戸もあり、風通しも良い
室内は板張りの仕上げ。寝ることも可能なソファ、デスク、トイレ、洗面所も付いて4畳半の広さ