僕の好きな風景 第93回 地域素材が創り出す空気感
床と天井は「秋田杉」。空間が優しいテイストに仕上がった
週刊かふう2025年3月7日号に掲載された内容です。
北は北海道から南は沖縄までさまざまな地域で仕事をさせていただいています。
最近はできる限りその地方の素材を使うように心がけているのですが、各地方の素材の表情が豊かで、まるで異なる雰囲気を醸し出すことに気付かされます。
それは感動的でもあり、ものによっては普段使用する素材との印象が大きく異なるため、一瞬、たじろいでしまう場合もあります。
それでも地域材を積極的に採用していくことは持続可能な建築へとつながり、地域経済への貢献でもあるので、できる限り、続けていきたいと考えています。
先日、秋田にて仕事をした時、外壁も内壁もせっかくなので、品質の高い「秋田杉」を使わせていただくことにしました。
i-worksと言う、僕が開発した規格住宅なのですが、プランは他と同じでも素材が変わるとまるで印象の異なる建築になることを目の当たりにしました。
床は杉の赤身を中心に、天井は杉の白身で色合いを揃えてもらったのですが、素材の優しさと柔らかさが壁の漆喰と共に、空間を包み込んで品の良い和のテイストとなりました。
浴室もいつもなら水に強い「さわら」を指定するのですが、今回は地元の「ひのき」でまとめてみました。見慣れている「ひのき」よりも赤みを帯びて優しい雰囲気です。
そうやって出来上がった建築は地域素材が創り出す空気感に満ちていて、すっかり魅了されてしまいました。
地方に美味い食材があるように、建築の素材も良いものがある……良い素材に出会えることが地方で仕事をすることの醍醐味なのでしょう。
仕事を通して地方の豊かさを知り、地方の魅力を味わいつつ、自分らしく料理(設計)して行かなければと感じています。
浴室の壁は地元の「ひのき」の上小節(ほとんど節がない)