僕の好きな風景 第96回 教えることは考え・学ぶこと
東大にて、設計スタジオのガイダンスの様子。学生たちに自分たちの授業の魅力をプレゼンし、受講者を募る
週刊かふう2025年6月6日号に掲載された内容です。
今年から東京芸大の非常勤講師が復活、東大でも設計スタジオの講師を務めることになりました。
後期には昨年に引き続き日芸大の非常勤講師も務めることになるので本業である設計への影響を心配しています。
それに加えて社会人向けの「住宅デザイン学校」の校長(講師でもある)も13年目、その他、工務店向け・ハウスメーカー向けの設計教室も進行中。
頼まれると引き受けてしまうのは、必ずしも教えることが消耗するだけではないことをよく理解しているからです。
「工務店を育てるな」「ライバルを育てているようなもの」と建築家の知り合いに言われることもありますが、そうだとしても、自分を鍛えているとも言えるのではないかと思えるのです。
それに比べて大学ではこれから建築やデザインを学ぶ1年生を担当しているので、建築が楽しくなり、最新の必要な知識が身につくように授業を工夫します。
これまで自分が知り得たこと、今、やっている事を脚色なしに素直に伝えるようにしています。
その方が、説得力があり、伝わる力となると信じています。
学生であれ、社会人であれ、彼らに教えること(アウトプット)が自分の学びであり、考えること(インプット)につながって、実務の建築設計に生きてくるのだとわかってきたのです。
また、若い人たちと一緒にいることが、業界慣れした僕の頭の中を浄化してくれるように感じます。
最近、教え子たちが建築界で、それぞれの地域で、活躍しはじめた姿を見かけるようになってきました。
ライバルを育ててしまったのかもしれませんが、穏やかな幸福感に包まれた感情は教師冥利に尽きると言えます。
とは言え、負けないようにこれからも頑張ります。
芸大の授業のレポート。授業の前に講義のポイントを質問形式で問いかけ、授業中に書いて提出してもらう。手を動かすことで記憶に残り、将来のメモを取る訓練にもなる