僕の好きな風景 第33回 緑を纏(まと)う都市の建築
緑を纏(まと)う都市の建築
2年ほど前に台湾で講演をした事がきっかけで、台湾の方からゲストルームの設計を依頼され、現場調査とプロジェクトの体制を整えるために現地を訪れました。
台湾の方のおもてなしはいつも凄いなぁと感じているのですが、今回も到着早々、依頼者の親戚の結婚式の披露宴に顔を出す事になり(笑)、親戚や地元の名士の方々に紹介され、乾杯の嵐……。気候も人当たりも沖縄に近くて、身構えていた心がやんわりとほぐれるようなおもてなしでした。台湾は、言葉は違えど沖縄にいるかのような親しみが込み上げてきます。
滞在中、依頼者の奥さまが自分のお気に入りのギャラリーやレストランなどに連れていってくれました。自分の価値観を見て、味わって、肌で感じてもらおうと懸命にプレゼンテーションしてくれたのです。
その中で彼女の好きな地元のバンムタン(半畝糖)という、設計事務所が関わった都市部に建つ緑に覆われた高層のビルに目を奪われました。
ビルの周辺に水辺と里山の風景を創り出した、環境への意識の高い建築です。
1階は同じくバンムタンの設計した緑に囲まれたレストランやギャラリー、外部空間に面した居住者たちの共用のスペースで都市の中とは思えない豊かな環境に包まれていました。上階の居住スペース(モデルハウス)も見せていただきましたが、緑を纏った半戸外空間を持つ、日本のマンションとは異なる、まるで土地付きの一戸建て住宅のようです。アジアではこのような植物を纏い、住まいの環境を整える建築をよく見かけます。
温暖化が叫ばれる中、日本でも、緑化を面倒くさがらず、子供や孫の未来の環境を思う心を持つオーナーたちが増えてくれることを願います。