僕の好きな風景 第32回 旅の実測スケッチ
旅の実測スケッチ
建築家はよく旅をします。
出会って「いいなぁ」と思った建築や居場所のスケッチを描き、メジャーを当てて寸法を出し、それを記録する。
そんなことを繰り返しながら実測した事を自分の仕事に生かしていきます。
これを勝手に「旅の実測スケッチ」と呼んでいて、いいなぁと思ったら「早速実測」(さっそくじっそく)と心で叫んでスケッチに入ります。
そういう「いいなぁ!!」に出会えることが旅の醍醐味だと思います。
しかし、実測はなかなか骨が折れるものです。
歳を取ると筆も遅くなるものですが、「いいなぁ」と思う事もだんだん減ってくるように思います。それは経験を積んだからだとも言えるのですが、だからこそ、また旅に出て、まだ見ぬ「いいなぁ」に出会いたいと思うのです。
それを描き残し、自分の血肉にするだけでなく、第三者にもその魅力が伝わるといい……コミュニケーションのツールとしてもいい物だと思います。
旅の実測スケッチは自分のライフワークのひとつでもあります。
既に書籍化の話しもあり、そのためにもたくさん旅に出なければいけない、でもそれが義務になると旅の楽しみが減るような気がして寂しい。
未知の世界、いきたい世界はまだまだたくさんあり、生きている間に行けるところは限られているけれども、これからも実測スケッチを自分の仕事に
生かしていきたいと思う。旅の実測スケッチこそ、「眼を養い、手を練る」最も有効な訓練でもあるのです。
スケッチは建築家ル・コルビュジェの代表作のひとつ、ラ・トゥーレット修道院。