僕の好きな風景 第29回 自然に溶け込む建築
自然に溶け込む建築
先日、数年ぶりにスリランカへ行ってきました。熱帯建築家、ジェフリー・バワの仕事を見るためです。
バワの建築は地形や周辺環境に逆らわず、自然とともにある存在が日本の建築家の中でも人気です。
20世紀は建築の時代、21世紀は庭の時代……「庭の時代を牽引したのはバワ」だと言ったのは、オリンピックに向けて国立競技場を設計に取り組んでいる建築家、隈研吾さん。建築という概念を庭、外部環境にまで広げた、バワの功績は大きいと思います。
そもそも日本では、建築は庭とともにあるのが普通。そこが日本の建築家の共感を呼ぶのだと思います。
気候変動が凄まじい時代となり、温暖化防止のための二酸化炭素削減は建築界でも重要な課題です。しかし、日本の建築家は全体として、省エネには前向きとは言えません。理由は表現の自由が損なわれる、省エネに取り組んでも建築家として評価してもらえないという懸念があるからです。
海外では法律が強化されているので、省エネを踏まえた上に建築の新しい魅力に取り組んでいます。
日本の建築界も本腰を上げて気候変動を抑えるため努力をしなければなりません。そのヒントのひとつが、自然に溶け込むバワの建築の中にあると思っています。
自己顕示欲の強い、目立とうとする建築の時代は終わり、環境・省エネを考えた、控えめで地域性豊かな建築が評価される時代がきてほしいと思います。
バワは控えめどころか建築が消えてしまう、まさに熱帯建築家と呼ぶにふさわしい。このような建築こそカッコイイと思いませんか?
管理は大変ですけど、それを引き受ける時代なのだと思います。