僕の好きな風景 第28回 灯りの設計作法
灯りの設計作法
住まいの設計の打ち合わせでよくある要望が「明るい家にしてほしい」。
大きな窓、たくさんの窓を設けて、昼間も明るく、そして夜も照明も明るくできるように……という内容です。
それに対して「良い景色が見えないのなら大きな窓は必要ない」とか、「窓の数が多い家は落ち着かない、壁を残した方がいい」とか、「夜になっても昼間のように明るいインテリアは無粋」だとか、日本のみならず海外の名建築で見てきた空間の心地よさ、照明の温かさと落ち着きを説明し、必死に抵抗してきました。
海外に比べて日本の住宅は「灯りの空間が貧弱」とよく指摘される事ですが、明るい事が決して豊かな空間ではないことは理解してはいても、日本人は照明の使い方が下手なことは確か。
蛍光灯が普及して、工場やオフィスだけでなく住まいの中にも浸透したことが日本の住空間を貧しくした一因ではないかとも思います。
最近は日本でもデンマークの「ヒュッゲ」(簡単にいうと心地よい時間、空間を過ごす事)がブームです。テレビで観たヒュッゲの特集で、ヒュッゲな「照明・灯り」のあり方が紹介されていました。
窓の外が暗くなってきたら、窓際においた照明(スタンド)から灯りを灯していくのだそうです。部屋の天井の真ん中に付けたUFOのような蛍光灯を灯すのではありません(笑)。灯りの重心を低くして、多くの温かい照明で空間を創り上げていました。
僕の灯りの設計作法は「天井にできるだけ照明を付けない」こと。
その代わりに壁付のブラケットやスタンド、造り付けの家具に仕込んだ間接照明で灯りの重心を低くして、落ち着いた空間を創るようにしています。
均一に部屋全体を明るくするのではなくて、それぞれの居場所を温かく照らしてあげるのです。
テレビで観た「ヒュッゲ」な空間に「我が意を得たり」と言う気持ちになりました。