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僕の好きな風景 第23回 「沖縄らしさ」の到達点が消える? その2

僕の好きな風景 第23回 「沖縄らしさ」の到達点が消える? その2

「沖縄らしさ」の到達点が消える? その2

 最近、日本全国で建築の保存に関する議論を耳にしますが、その都度、建築界と一般の市民の温度差を強く感じます。
 名護市庁舎の場合は竣工当時から建物に対する形態的な違和感、オフィスとしての居心地の悪さは耳にしていました。賛否両論はあるにしても、建築界の全国コンペで選ばれた案が具現化し、建築界では大きな話題となりました。赤瓦の屋根などの直接的な沖縄らしいアイテムに捕われず、アサギテラス(大きな軒下空間で日射遮蔽)や風の道(海風・陸風を利用)を建築化したパッシブデザイン(自然を取り入れ、自然と応答して暮らすデザイン)を駆使した優れた案として評価されたのです。沖縄の現代建築の到達点として特筆すべき建築である事は間違いありません。
 しかし、エアコンが無くても涼しいという建築家の情緒的な願望は、コンピューターをはじめとした発熱家電が普及した現代オフィスでは通用せず、その後、エアコンが取り付けられる事になります。湿度の問題はパッシブデザインではコントロールできないし、太陽の熱、光、風のシミュレーションは今の時代であれば難しいことではなく、その結果を設計に活かす事ができます。
 今や、建築家は夢を語りつつも、利用者との強い「共感」を創り上げるために建築物理を正しく学び、シミュレーションを駆使して設計に取り入れなければならない時代となってきました。
 建築界だけの思いで創られた建築、利用者との「共感」のない建築は永く愛されず、安易に建て替えられていくのでしょう。
 名護市庁舎は十分に議論され、注目を浴びて創り出された建築だと思うのは、建築界にいる偏った考えでしょうか?(笑)
 今の時代の到達した見識で名護市庁舎の健全な維持・改善は可能だと思います。

僕の好きな風景 第23回 「沖縄らしさ」の到達点が消える? その2

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