僕の好きな風景 第20回 雨樋はデザインの隠し味
雨樋はデザインの隠し味
建物の中で、屋根という部位は最も過酷な役割を担っています。雨や強い日差しを防ぐだけでなく、風の吹き上げにも耐えなければなりません。
屋根自体、自分の役割で大変だと思うのですが、軒を出すことで壁までも守ってくれるなんとも頼りになる存在です。
その屋根に付随して、雨天時に働いてくれる存在が雨樋(あまどい)です。
ちなみに雨樋の役割は何だと思いますか? 住まい手を雨垂れから守るため、あるいは建物の汚れを防ぐためと答える方が多いのではないでしょうか?
雨樋メーカーの社長さんに聞いたところ、生活水としての雨水を集めるために生まれたのだそうです。
沖縄では雨水を天水(てんすい)と呼んでいましたが、雨樋は生きるために必要な天からの恵みを集める道具だったのです。
そんな大事な役割を持っていた雨樋も現代建築の中では、建築をカッコ悪くする「嫌われ者」です。建築家は雨樋を何とか隠そうとして工夫します。
しかし、自然は容赦なく、見た目だけのデザインに天罰を与え、雨漏りさせたりするのです(笑)。
メーカーはメーカーで売らんがためにカッコイイ樋(とい)にしようと余計なデザインをして、設計者に敬遠されてしまう……。そこで、あるメーカーとともに開発したのが、誰のデザインも邪魔しないシンプルで目立たない雨樋。ガルバリウム合金で耐久性も高く、上吊り金具で下から金具が見えないスッキリデザイン。
この雨樋は10年以上も前に発売され、今でも多くの設計者に使っていただいています。
水平に伸びるシンプルな雨樋は、今や、デザインの隠し味と言うべき存在なのです。