僕の好きな風景 第13回 広縁の底力 旧イタリア大使館別荘
広縁の底力 旧イタリア大使館別荘
初夏の湖畔はとてもさわやかで気持ちいい…… 天気に恵まれたこの季節に、日光国立公園内にある中禅寺湖のほとりに建つ旧イタリア大使館別荘を訪ねました。
明治中頃から昭和にかけて、このあたりは多くの大使館の避暑地として賑わったよう。
日本の建築界に大きな足跡を残したアントニン・レーモンドの設計によって昭和3年に建てられたこの別荘は、東洋と西洋の美を融合させた建築として高く評価されていて、屋根も外壁も、さらには内壁にまで、地元の日光杉の皮で様々なパターンを描きながら仕上げられています。
杉皮で創られた心地よい空間はもちろんですが、その魅力は中禅寺湖に向かう広縁のあり方にある。日本的な広縁は通路であり、外と内の習慣的な緩衝帯なのですが、季節の良い時に雨戸とガラス戸を開け放てば、この広縁はまるで西洋的なベランダのようです。
細長い、あちこちに居場所の設けられた外のリビングとして、新鮮な魅力を感じました。
同じ風景を望む、日本のお寺の広縁とは異なる、ゆったりとしたコンフォータブルな居場所であり、そのあり方が別荘建築としてくつろぎや安らぎを感じさせてくれます。