僕の好きな風景 第40回 手が考える。
今年はコロナ禍で提出が当日ではなくなり、時間をかけて着色された物も見受けられた
数年前から東京芸大で「建築構法」の授業を担当しています。
聴講生は1年生、建築を学び始めた学生を担当することは大役だなあと勝手に思っています。
建築の基本的な知識を身につけてもらうことはもちろん、建築と言う行為は楽しいことであり、社会に役立つ仕事でもあるということを伝えたいと強く感じていました。
授業は全てパワーポイントでまとめ、文章だけでなく画像を見てもらい、僕の個人的な建築の見方を説明するスタイル。
将来、「ものつくり」として活動する作家を育てる大学ですから、建築の教科書に出てくる学問としての構法でなく、生きた現場の構法を伝えること、そして、頭で考えるだけでなく、身体と気持ちで考えることが大事であることが伝わればいいなと取り組みました。
出席代わりに毎回授業終了時にレポートを提出してもらっていますが、前もって最低限理解して欲しい内容を「問い」として配布し、パワポを見てもらいながら話した内容の中から、答えを見つけ、それぞれが感じたことを、それぞれのやり方でまとめて提出してもらいます。
宿題がない代わりに、かなりの集中力が必要となります。
しかし、社会に出るとそのようなことは当たり前、毎日が取捨選択の連続なのですから、その訓練も兼ねています。
学生がその場でまとめたレポートに目を通すと、たびたび、その内容に驚かされます。
芸大という特殊な世界だからなのか? とにかく手が動く……パワポの数秒の画像をサッとスケッチで書き上げ、説明を添えてまとめることはお手のものなのです。
自分も学生の頃はそうだったなあと感慨深く感じつつも、手で考えることの重要さを再認識しています。
手と脳は強く連動している……手が考えると言っていいのです。
身体と心、全身で考える基本が手を動かすことにあることを、いつも学生から教わっています。