基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File.12 相続人があることが明らかでないとき
週刊かふう2024年12月13日号に掲載された内容です。
Q.
隣家が空き家となり、不衛生な状態や倒木の危険に困っています。隣家の男性は昨年亡くなり、相続人が不明です。相続人がいれば対応をお願いできますが、いない場合の管理方法がわかりません。家族の協力がないと対応は難しいのでしょうか。また、管理にかかる費用についても知りたいです。
私は、自宅不動産を所有しています。私の家の隣には、高齢の男性が住んでいたのですが、身体が不自由になって施設に入ることにしたようで、数年前にその男性が施設に入ることになってからは空き家状態となっていました。
隣家が空き家になって放置されている状態となっているせいか、近年ごみが捨てられてしまうようになり、不衛生な状態になって困っています。また、隣家の敷地に大きな木が立っているのですが、これも手入れする人がいないので伸び放題になっていて、わが家の方に倒れたりしないか心配です。
隣家の男性になんとか対応してもらおうと、隣家の男性が入所していた施設に連絡をとると、昨年死亡していることがわかりました。隣家の男性のご家族の話は聞いたことがなく、施設の方もご家族のことは何もわからないとのことでした。
このままでは私の家や周辺環境に危険が続いてしまって困ります。亡くなった男性に相続人がいれば対応をお願いすることもあり得ると思いますが、相続人がいない場合には、隣家の管理について、どうすれば対応できるでしょうか。やはり亡くなった方のご家族の協力がなければ、対応は難しいのでしょうか。もし何か手段があれば、費用はどうなるでしょうか。
A.亡くなった方に戸籍上相続人がいない場合や、戸籍上は相続人がいたとしても相続人が全員相続放棄をした場合には、亡くなった方の権利義務が宙に浮いてしまうことがあります。そのような場合、亡くなった方の対応が必要だった事柄についての処理が難しくなってしまいますが、相続財産清算人の制度を利用することで解決が可能になるかもしれません。
戸籍上、亡くなった方に相続人がいない場合や、戸籍上の相続人全員が相続放棄をした結果、相続人がいなくなった場合等、「相続人のあることが明らかでないとき」には、相続財産清算人の制度を利用することが考えられます。
相続財産清算人は、相続財産を管理・清算して、なお財産が残ればこれを国庫に引き継ぐなどの職務を行います。相続財産清算人選任の申し立ては、利害関係人が行うことが可能とされていて、利害関係人には被相続人の債権者も含まれますので、相談者も家庭裁判所に対し、亡くなった方の相続財産清算人の選任申し立てをすることができます。この際、亡くなった方に戸籍上相続人がいるかどうかは、申し立てを行う人の責任で調べる必要があります。そして、相続財産清算人が選任されれば、相続財産清算人は、家庭裁判所の許可を得て、当該不動産を売却処分することもできますので、本件のような空き家問題も解決できる可能性があります。
相続財産清算人の選任申し立てのための費用として、家庭裁判所に申立手数料や切手代がかかる他、官報公告費や相続財産清算人の報酬に充てるための予納金の納付が必要となります。もっとも、相続財産清算人が不動産を売却する等して管理費用を上回るだけの財産が形成され、管理費用を支出した後に残額がある場合には、予納金について返還してもらうことができます。とは言え、煩雑な手続き等もありますから、まずは専門家に相談することをおすすめします。
本年も基礎からわかる相続Q&Aにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。皆さま、良いお年をお迎えください。
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