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都市を持て。田舎へ出よう。 第十三歩

都市を持て。田舎へ出よう。 第十三歩

週刊かふう2020年4月24日号に掲載された内容です。

第十三歩 「謎のイルカ島 もしくは豆腐島」

 沖縄に撮影に来る撮影隊を案内するフィルム・コミッションという仕事をしていたので、本島のほとんどの海岸は見て回り、知っている事も多いが、まだまだ知らない事もある。
 北中城村観光協会に務めるようになり約半年がたつが、北中城村にも謎多き海岸がある。村の一番端。沖縄県総合運動公園近くの海岸にある小さな岩場。イルカ島とも豆腐島とも呼ばれる岩場だ。
 この岩場、2017年頃まではGoogleマップ上で「イルカ島」と表記されていた。当時、北中城村地域おこし協力隊の隊員から「沖縄に詳しい又吉さんなら、イルカ島の事知りませんか?」と聞かれ、初めて知り、情報を集めてみたが、この島がなぜイルカ島と呼ばれるのか、全く不明だった。
 その代わりに地元の人からは「豆腐島」と親しまれているという情報は幾つもあった。2020年現在のGoogle マップでは「豆腐島」と表記されている。そもそもGoogleがどのような要件でその島の名前をイルカ島と表記し、後に豆腐島と変更したかは分からないが、確かにイルカ島と呼ばれていた事はあるようだ。
 オーストラリアのエアーズロック(ウルル)をも彷彿とさせる佇まいは、少々神聖な感じさえする。この島のある北中城村渡口集落の字史には、この島にかつては拝所があった。とされているようだが、現在はそのような痕跡は見られない。
 40年以上前には、島の周りで、マシンガンの弾や薬きょう、手りゅう弾から不発弾といろんな物が拾えて、島には米軍ヘリコプターも着陸したとのうわさもあったようだ。しかしヘリが着陸できるような大きさには見えない。島全体が砂岩でできているようで、侵食でどんどん小さくなっている。という話もある。実際、かなり脆(もろ)く、小石や貝殻でも岩肌を削る事ができる。「脆いから豆腐なのか?」それとも侵食が進む前は豆腐のように四角い形をし、ヘリが着陸できる程大きかったのか。謎は深まるばかりだ。
 もちろん「都市伝説」という言葉もあるくらいだから、都市においても不思議な事や謎はあるだろう。しかし、多くの場合、都市伝説はインターネットを少し検索すれば多量にヒットし「幽霊の正体見たり枯れ尾花」よろしく、不思議も謎も直ちにネタバラシされる事も多い。
 それに対して田舎の謎は情報が限られ、ネット上を検索しても見つからない。分からない。という事も多い。そして分からないからこそ、私たちは想像力や好奇心がかき立てられる。田舎は不思議と謎に満ちているのだ。

 という訳で、これからは田舎の時代となるのだ。やはり。

都市を持て。田舎へ出よう。 第十三歩

海岸にポツンと佇む豆腐島。干潮時には歩いて渡れる

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高さ6〜7m程度の岩。侵食で削れている

都市を持て。田舎へ出よう。 第十三歩

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