都市を持て。田舎へ出よう。 第十四歩
週刊かふう2020年6月19日号に掲載された内容です。
第十三歩 「ポツンと一軒家が人気の訳」
私の好きなテレビ番組の一つに「ポツンと一軒家」というテレビ番組がある。聞くところによると視聴率も高いそうなので、ご存じの方も多いだろう。日本各地の山奥や海沿い等、周囲に民家もない中、ポツンと建っている一軒家を探し、衛星写真を頼りに訪れ、その家で生活している人にインタビューをするという番組だ。
所ジョージと本職は塾講師の林修氏がスタジオで出演しているが、主役はあくまでポツンと一軒家に暮らす人々だ。切り立った崖や、今にも土砂崩れしそうな山、本当にこの先に建物があって人が住んでいるとは想像もできないような険しい道を進むと、急に生活感のある家が現れる。
そしてそこに住む人は、多少の不便さは苦笑いしつつも、苦労を苦労と嘆く事もなくそこに住んでいる。
しかし、そこに住む人達は様々だ。年寄りの一人暮らしであったり、料理を出している店であったり、若い夫婦であったり……。 おかしな話だが、そういった年齢も性別も住む理由もバラバラな人達に、私は共通項を見てしまう。 人里離れた場所で暮らす人々は、なんとも等身大なのである。全く背伸びをしていない。社会的・経済的な成長や成功こそが正しい、という価値観など感じない。つつましやかに暮らす姿は、ぜいたくを尽くした豪華な住まいに住む成功者と比べ、なぜか自由にさえ見える。
私も十分田舎に住んでいるが、コンビニは車で5分だし、ネットは快適。徒歩数十分も山道を登ったりする事もない。「ポツンと一軒家」で紹介されるような方々を見るにつけ、私のような田舎初心者というか田舎の片隅をつまんだくらいの者が、訳知り顔で田舎暮らしの話をしているのは、何とも気恥ずかしくさえなってくる。
そんなことを考えながら、気分転換に散歩をと今帰仁の田舎道を散歩する。
「ポツンと一軒家」で思い出した建物があった。今帰仁村崎山にあるツタに覆われた小屋だ。人が住む住居ではない。今帰仁村では昔、たばこの生産がさかんだったそうだが、この小屋は収穫したたばこの葉を乾燥させる小屋だったらしい。崎山の白いビニールハウスと赤土の畑の中、急に深い緑の建物があるので、アクセスは悪くないが、まさに「ポツンと一軒家」のように見える。
ふと思う。確かに番組に出てくるような達人たちから比べれば、私はヒヨッコではある。そもそも私は成功者とは言えないだろうが、等身大という意味では、多少胸をはったってバチは当たらないだろう。背伸びせず、そのままに。
たばこ小屋のツタが風になびいて、何だかくすぐったくなった。
という訳で、これからは田舎の時代となるのだ。やはり。
今帰仁村崎山にある、蔦に覆われた小屋
今帰仁村玉城の拝所。沖縄の場合「ポツンと一軒拝所」が多そう