教えてコンサル金城さん 不動産のギモン解決! 第3回 賃貸併用住宅のプランニング
Tさんの住む賃貸併用住宅。2階と4階は2部屋ずつの賃貸住宅にし、将来は子どもたちも使用できるようプランニングした
将来を見すえた
賃貸併用住宅
「賃貸併用住宅」とは、戸建て住宅の一部に賃貸住宅をプラスした建物です。
今回は、さら地の状態からプランニングに関わったTさんの事例を紹介します。約45坪の敷地に、賃貸併用住宅を検討したTさんご夫婦。まずは、プランニングの中で賃貸併用にすることで得られる収益に加え、重きを置いたのが将来、子どもたちのための活用方法でした。
同物件は4階建て、Tさん家族は3階を使用し、2階と4階に2部屋ずつ、計4部屋の賃貸住宅に。現在、賃貸部分は貸し出し中で、将来は子どもたちが就職や結婚した場合などに家賃を払ってもらい、自立に向けて使用できるようプランニングしました。さらに、子どもたちの家族が増えれば、Tさん夫婦が別の階へ移動したり、子どもたちが使用しない場合は貸し出せば、老後の収入源になると考えました。
用途をご夫婦でしっかり考えられていたので、今回不動産コンサルでは、構造計算に詳しい一級建築士が関わった結果、建築コストが削減でき、当初の収支に比べ大幅に改善。さらに、不動産に詳しい税理士のアドバイスによって賃貸収入部分の所得税の節税につながりました。
Tさんから、「わが家の敷地はたった45坪ですが、角地を活用して、駐車場9台分確保し、人気の地域といわれる敷地の強みを最大限に引き出せたと自負しています。お金の面や設計、完成後の運用まで金城さんにコンサルタントとして入っていただき、不安ながらも乗り越えられました」とコメントをいただきました。
賃貸併用住宅の
メリット・デメリット
賃貸併用住宅のメリットは、「住宅ローンが使えること」。適用条件がありますが、建物全体に占める住宅部分の床面積割合が1/2以上あると、賃貸部分も含め、通常のアパートローンよりも低金利の住宅ローンを利用できます。広い土地を所有する方にとっては、小規模宅地の特例制度の利用や土地固定資産税が減額になるなど税制上のメリットがあるほか、家族のライフスタイルに合わせて対応できるのもポイントです。
Tさんの事例でも紹介しましたが、賃貸部分は、①将来の子ども夫婦との同居、②子どもの独立部屋、③賃貸住宅として活用など、多用な活用方法を想定して、賃貸収入をローン返済の一部に充てることも出来ます。
デメリットは、建物が完成したからといって賃貸部分は自動的に賃料収入が入るわけではありません。空室になれば予定した賃料収入が入らず、さらに退去によるリフォームや建物維持のための予定外の出費に困る方もいます。
プランニングのポイント
賃貸併用住宅を考える場合、更地の段階で入念な調査に基づく賃貸経営計画や関係者との綿密な打ち合わせが大切です。どのような方をターゲットとして入居者を募るのか、また間取りによって建物の大きさが変わるため、建築費の増額で収支バランスが崩れることがあります。建築費割合をどう減らし、どのくらいの家賃収入が得られるかを事前調査することは賃貸経営を行う上で大切ですので、建築会社や管理会社任せにせず、オーナーがしっかり把握しなければなりません。近年は建築費の高騰も懸念されており、専門家の知識を活用しながら収支の検討をおすすめします。
次回は、「資産の有効活用」について紹介します。
***プロフィール
金城 久雄(きんじょう ひさお)
1963年生まれ、嘉手納町出身。住宅販売や不動産会社勤務を経て、2004年に独立。2016年に、(有)iホーム不動産コンサルティングに社名変更。不動産コンサルティングマスターとして、狭小地有効活用や住宅、住宅兼アパートのプランニングを数多く手掛ける。
沖縄県不動産コンサル実務研修会セミナー講師、暮らしの行政相談員としても活動中。
沖縄県不動産コンサルティング協議会理事