教えてコンサル金城さん 不動産のギモン解決! 第8回 家族信託を使った土地活用
ご自身や家族が認知症などで意思判断が難しくなる前に、信頼する家族などに財産管理を託す制度があります。今回は家族信託について事例を交えながら解説します。
家族信託制度の活用を考える
日本の平均寿命は、男性81・6歳、女性87・7歳と世界でも上位ですが、男女共に平均寿命と平均健康寿命との間に10年以上もの開きがあるのをご存じでしょうか。これは健康でない期間が長くあることを意味しており、特に問題とされるのが認知症の発症による生活機能障害です。
不動産の所有者が認知症になると、相続財産について相続人の思いを伝えることが困難になるほか、売却や清算処分などの意思決定ができなくなる場合があります。そのような状況を防ぐために、お持ちの不動産を家族や信頼する人に託す制度が「家族信託契約」です。
不動産資産の家族信託制度を利用する際には、法務局で行う信託登記が必要です。例えば、親の不動産資産を家族の名前で信託登記を行うと、親が認知症になったときでも登記した信託契約内容に基づいて管理や売却することができます。今回はこの制度を使って土地活用を行ったОさんの事例を紹介します。
複数の土地を所有する90代のОさんは、長男が60代、お孫さんが40代の3世代に渡る相続対策を検討していました。家族信託に詳しい司法書士からの紹介で、土地活用と家族信託制度の利用を含めた相談を受けました。ご実家を住宅兼共同住宅への建て替えを希望しており、Оさんは家族信託契約時には意思をはっきり示すことができたので、認知症対策を十分に考慮した説明が行われ、信託登記を済ませました。
家族信託を選択し活用する
Оさん一家は住居兼共同住宅を建てるにあたって、土地所有者のОさんが意思をはっきり示すことができる時に、長男に土地活用の意思を引き継ぎ、さらに孫まで引き継げるよう司法書士と信託内容を相談して、書面に残し契約、信託登記を行いました。私は不動産コンサルとして、金融機関と3代に渡る銀行借り入れの金額の交渉や信託口座開設の手続き、収益不動産の立案、司法書士と金融機関の仲立ちなどを行いました。
もし、家族信託契約を結ばずに企画や建築を始めた場合、途中でOさんが認知症等を発症した場合などは、土地活用に関する契約行為ができなくなり、計画が途中で頓挫する可能性があります。
実際、建築途中にOさんが急病のためお亡くなりになりました。ご家族にとって大変悲しい出来事ですが、事前に家族信託契約を結んでいたのでOさんの思いはしっかり引き継がれ、無事建物も完成。、家族信託契約を選択したことが、土地活用を最後まで遂行するための“要”となりました。
家族信託契約書を金融機関に提出すると、建築資金の借り入れがスムーズになりますし、設計、建築請負、不動産コンサルティングなどの契約も安心して始めることができました。
超高齢化に伴う問題は、不動産の相続にも関係します。家族信託に精通した専門家への事前相談で、それぞれの家族間で起こりえる問題を回避していきましょう。
次回は、「家は買うべきか? 借りるべきか?」について解説します。