自然素材ならではの経年変化にしか出せない美しさ 世代を経ても資産価値が落ちない沖縄型省エネ住宅 琉球住樂
琉球石灰岩の石積みやヒンプン、雨端空間など伝統を取り入れた外観デザイン
ハード・ソフトの両面で、長く住み継がれる条件を整える
木造であれどんな構造であれ、家が住み手から長く愛され、資産価値が落ちないいわゆる 長寿命住宅 となるには何が必要でしょうか。ポイントは2つあり、一つはハードとしての建物自体に長持ちする仕組みが備わっていること。使用する素材の耐久性やメンテナンス性はもちろん重要であり、そのポテンシャルを十二分に発揮させるだけの技術力もまた求められます。もう一つは、年月を経ても、世代が変わっても、「ここで暮らしたい」と思わせるだけの快適さがあること。 快適さ は主観的で漠然とした指標ですが、温湿度環境・空間デザイン・素材の風合いといった要素をひもといていけば、ある程度の普遍的な方向性が見えてくるかもしれません。
2008年の創業以来、琉球住樂が一貫して目指してきたのは、次世代・三世代先まで住み継がれるような沖縄型省エネ木造住宅です。無垢材の丸柱や床材、漆喰の塗り壁など素地を生かした空間は、自然素材ならではの肌触り感や空気感があり、経年とともに趣を増していきます。その上で高度な断熱性を整えて、温湿度が安定した居心地の良い住環境を創造しています。
「昨年末までの引き渡し件数は100棟超。一軒一軒の住宅が基点となって共感の輪が広がり、私たちの家づくりに賛同してくれるお客様が少しずつ増えていきました」と話すのは、同社専務取締役の伊良皆盛栄さん。住宅設計の仕事を始めた埼玉県の工務店時代、「築百年以上の古民家がたたえる美しさ」や「エアコン一台で賄える家」に感銘を受け、帰沖後は独自に研究・実験・検証を実践。本土とはまったく気候風土が異なる条件下で、最適なスタイルを確立していきました。
飫肥杉の無垢材と漆喰でできた、省エネ性に優れた住環境
琉球住樂の家が基本としているのは、沖縄の伝統的な民家形態です。例えば軒先には強烈な日差しを遮るために屋根を延ばして深い雨端空間をつくり、間取りも年間を通した風の巡り方を考慮してレイアウトを行っています。また子や孫の代まで住み継がれる家を目指す以上は、50年先、100年先でも容易に手に入る材料を用いる必要があり、そのためには「長い歴史の淘汰を受けて今なお価値あるものを選ぶべき」との考えから、家の骨格には主に無垢材と漆喰を使用しています。
構造材や床材、造り付け家具に使われているのは、宮崎県産の飫肥杉です。沖縄では古くからサバニ(漁船)の材料としてなじみがあり、他産地の杉材と比べると「油分が多くて粘りがあり、乾燥が進んでも強度が落ちにくい」といった特徴があります。
漆喰は、石灰石を焼成・消化してできた消石灰を主原料とする塗り壁材で、建築史には洋の東西を問わず1000年以上前から登場します。機能的には調湿性・抗菌性・消臭性などに優れ、多湿な状態が長く続く沖縄には最適な仕上げ材です。同社では県産材でつくる漆喰を採用しており、数年前から白以外のカラーも取り入れて、デザインのバリエーションを広げています。
一方で住宅性能の面では、沖縄に適した断熱基準の追求を続け、外気の影響を受けやすい窓回りにはLow E複層ガラスと樹脂サッシをいち早く導入し、屋根・壁・基礎のベストな断熱仕様も精査して、安定した温湿度環境を確保。窓を閉め切っていても、自然に給排気が行われるように気密性を高め、適切な換気計画を立てて室内の空気をよどみなく循環させることで、沖縄版の「エアコン一台で賄える家」を実現しました。そして窓の外に一歩出れば、雨端を吹き抜ける自然風の心地良さを感じることができます。
設計力がある工務店として、新しいタイプの木造住宅を模索
住宅会社としての自社の立ち位置について、伊良皆さんは「設計力のある工務店でありたい」と話しています。施工面では、基礎や建て方から内部工事、左官まで、それぞれの工程で腕利きの職人をそろえるとともに、事務所敷地内に自社加工場を備え、家具や造作物を製作。その上で施主それぞれのライフスタイルに沿った空間デザインを提案しています。最近では若手の設計スタッフも着々と育っており、伊良皆さんの経験にみずみずしい感性をプラスした、「新バージョンの琉球住樂の家」が誕生する下地が整いつつあります。
設計力がある工務店として、新しいタイプの木造住宅を模索
住宅会社としての自社の立ち位置について、伊良皆さんは「設計力のある工務店でありたい」と話しています。施工面では、基礎や建て方から内部工事、左官まで、それぞれの工程で腕利きの職人をそろえるとともに、事務所敷地内に自社加工場を備え、家具や造作物を製作。その上で施主それぞれのライフスタイルに沿った空間デザインを提案しています。最近では若手の設計スタッフも着々と育っており、伊良皆さんの経験にみずみずしい感性をプラスした、「新バージョンの琉球住樂の家」が誕生する下地が整いつつあります。