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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

片流れの木屋根の下 家の中を路地が通る家

片流れの木屋根の下 家の中を路地が通る家

DATA
設  計: 濱元宏建築設計事務所
     +株式会社GAB
     (担当/濱元宏、豊崎孟史)
敷地面積: 150.8㎡(約45.62坪)
建築面積: 87.36㎡(約26.43坪)
延床面積: 87.36㎡(約26.43坪)
用途地域: 第一種低層住居専用地域
構  造: 混構造
     (鉄筋コンクリート造+木造)
      平屋
完成時期: 2020年7月
施  工: 株式会社GAB
     (担当/豊崎孟史)
電  気: 株式会社五光電工
     (担当/玉那覇五太、大城祐介)
水  道: 有限会社ライフ工業
     (担当/我喜屋奨)

施主のMさんは高齢の母親と2人暮らし。
旧知の建築士に相談して建てた新居は、「路地」が宅内を横断し、2つの生活空間を分節しつつも緩やかに連結する、木のぬくもりに満ちた平屋でした。

週刊かふう2023年4月7日号に掲載された内容です。

片流れの木屋根の下 家の中を路地が通る家

細い路地にたたずむ京町家をイメージした間取りとデザイン

 那覇市の小路沿いに建つMさんの新居は、RC造の躯体に片流れの木屋根を配した、床面積約26坪の混構造の平屋です。
 LDKを中心に介護動線を整えたメインの生活スペースが敷地の北側半分を占め、宅内を東西に横断する土間通路を挟んだ南側に、Mさんのコンパクトな個室が置かれています。
「見上げた時の木の雰囲気が好き。屋根の勾配に沿って等間隔に並んだ垂木は迫力があり、新築から3年近くたった今でも見とれてしまいますね」と施主のMさん。垂木と直交する桁の上部はガラス張りになっており、どこにいても屋根が南北に連続している様子が伺えて、視界に奥行きをもたらしています。

 Mさんにとって今回の家づくりは、実家の老朽化に伴う建て替えでした。古くから親交のある建築士に相談を持ちかけ、間取りもデザインも基本は一任。その中で「京都の町家はいいね。小さいながらも趣と品のある家にしたい」と発した一言がヒントになり、新居の素案ができあがりました。
 京都といえば路地。LDKと個室の間を縫って、玄関から勝手口まで真っすぐに伸びる細い土間はまさに路地空間そのものです。2つの生活スペースを緩やかに区切り、屋内外・居室間を行き来する際の通路であると同時に、各部屋の延長として多目的に活用できる中間領域の役割も果たしています。
 意匠だって町家風です。「路地」の両端の出入り口をはじめ、南側道路に面したファサードには木の縦格子が施されています。住宅街に情緒深い建物が突如出現したことで、「道行く人から飲食店とよく間違われた」のはある意味予想通り。縦格子は目隠しの機能も担い、リビングやキッチンでくつろぎながら、格子の隙間からのぞく屋外の様子を路地越しに感じ取ることができます。

片流れの木屋根の下 家の中を路地が通る家

「いい家ですね」という訪問者の声でわが家の魅力を再認識

 建て替え前後で大きく変わったのは、建築的な要素だけではありません。見える景色も一変しました。敷地外周を覆っていたブロック塀は取り払われ、公園や隣家の緑を借景にした潤いのある眺めが楽しめるようになりました。
「手入れが大変なので、庭の類いは一切不要と伝えたのですが、地域の有志の方々が目の前の公園を整備し、沿道に季節の花を飾ってくれているのだから、せめて一部を植栽スペースにして町並みに還元してはどうかと、建築士さんから提案がありました」。結果としてMさんの個室前の一角がターゲットになりましたが、縦格子と植栽の組み合わせは、外観の魅力アップと同時に目隠しにも役立っています。

 一方でLDKの北側には掃き出し窓が並び、隣家の庭に茂る木々が勢いよく眼前に迫ってきます。また新居全体が屋根の勾配を生かした空間構成になっているため、南側個室と比べてリビングやキッチンは開放感があり、天井付近に設置したハイサイドライトが明るさを補っています。
「ちょっとユニークなデザインの家かもしれませんが、私は住んでいる本人だから、住み心地にしろ使い勝手にしろ、もはやすべてが当たり前になっています。でも、来てくれた人が皆、”いい家ですね”と言ってくれるので、その度に”やっぱりそうか”と再認識させられます」。

 最近はMさんご自身も、南側個室はテレワークなどの仕事だけに使い、リビング脇にある母親用の個室で寝起きする機会が多くなりました。介護のしやすさを熟慮した生活動線は、介護の場面に限らず動きやすさ抜群。さらにはLDKの両サイドにあるロフトの充実を図るなど、居心地の追求に余念がありません。

写真ギャラリー

片流れの木屋根の下 家の中を路地が通る家

空間・外観の印象を左右するディテールにこだわった本気の納まり

デザイン性・耐久性・メンテナンス性を考慮して、場所ごとに部材の取り合いや寸法を決定
「路地」を土間的な中間領域にして、一つ屋根の下に「母屋」と「離れ」を同居させる

一級建築士:濱元宏さん

 設計面で最初に重視したのは、場所性と柔軟性の2点。南側道路を挟んだ正面には公園があり、地域の有志の方々が季節の花をフェンスに飾るなど、沿道の美化に取りくんでいました。周囲は古い住宅地でありながら、子どもたちをはじめ公共交通機関の利用者の往来が思いのほか多く、公園同様、道行く人の目を少しでも和ませられるように、地域に開放した家にしたいと考えました。
 また依頼を受けた当時は母と子の2人暮らしの予定でしたが、母親が高齢とあって、近い将来に施設に入ることなども考えられます。そのため施主のMさんが一人になっても持て余すことのないよう、変化に順応できる柔軟なプランニングが求められました。
 その中で「京町家のような家にしたい」とのリクエストがあり、「路地」という空間特性と「縦格子」を生かしたデザインが浮かび上がりました。配置・平面計画では、「母屋」と「離れ」に相当する大小2つの箱をそれぞれ北側・南側に置き、両者の間に縦格子などで取り囲まれた中間領域として、東西に抜ける「路地」を確保。当面は介護のしやすさを優先し、母屋側にLDKと母親の個室、水回りをまとめ、離れはMさんの個室に充てました。
 母と子のつかず離れずの関係性を保ちつつ、この先Mさんが母屋に移った場合には、離れはゲストルームなどに使用できます。また断面計画としては、公園や通りからの視線を考慮して南側の軒高を1・8メートルに抑えつつ、そこから2・4メートルの高さがある母屋入り口の建具までラインを引き、屋根の勾配を決定。母屋には天井懐を利用して、ロフトスペースを設けました。

 構造面では軟弱な地盤への対策として、躯体の下半分だけをRC造にして、上半分の壁と屋根は軽量な木造にしました。地面より上物の空間に予算を振り分けたほうがいいだろうとの判断ですが、一方では強度面や耐久性を考えると、木とコンクリートの接合方法が施工の大きなポイントになり、とりわけ両者の取り合い部分の水仕舞いには細心の注意を払いました。このようにデザインを基本に置きながらも、コストバランスや使い勝手、将来のメンテナンス性などを並行して検討し、デザインと施工の精度に優れた質の高い家づくりを常に心がけています。

設計・施工会社

濱元宏建築設計事務所+株式会社GAB(ギャブ)

TEL:098-987-7331http://gab.okinawa/

TEL:098-987-7331http://gab.okinawa/

豊見城市平良132-8 光陽マンション103

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