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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

快適な団らん空間を濃縮した 経年成長するRC造住宅

快適な団らん空間を濃縮した 経年成長するRC造住宅

DATA
設  計: スリースターズ株式会社
     (担当/宮里歩)
敷地面積: 155.86㎡(約47.14坪)
建築面積: 80.05㎡(約24.21坪)
延床面積: 76.82㎡(約23.23坪)
用途地域: 第一種中高層住居専用地域
構  造: 鉄筋コンクリ―ト造
完成時期: 2022年9月
建築・電気・水道: 
     スリースターズ株式会社
     (担当/宮里正信)
キッチン:  株式会社LIXIL 沖縄販売
     (担当/堀田勇希)

コンクリートの混和材として「バイオマスフライアッシュ」を使用した、低炭素型・環境配慮型のRC造住宅が完成。
高品質・高耐久な躯体に囲まれた家の中では、Iさん一家5人の温かな暮らしが営まれています。

 

週刊かふう2023年4月14日号に掲載された内容です。

快適な団らん空間を濃縮した 経年成長するRC造住宅

家族の親密な距離を重視したコンパクトな動線設計

 家族が時間を共にする家の中は、白を基調にした爽やかなカラーリング。新居を彩る正面の外壁は、お気に入りのマグカップ色。具体的な色の名前なんて必要ない、Iさんファミリーの思い出が詰まった、とっておきのファサードデザインです。
「職人さんに現物をお見せして、同じ色を再現できるまで現場で繰り返し調色してもらいました。内外装ともにシンプルにまとめた分、何かアクセントを入れたかったんです」と奥さま。他にも玄関ポーチの花ブロックや、通り沿いにリズミカルに並んだスリット窓が外観の表情を演出し、日が暮れれば団らん中の温かい明かりが表にこぼれてきます。

 夫婦と子ども3人が暮らすIさん宅は、建坪約24坪のコンパクトな平屋です。結婚してしばらくの間は内地で生活し、3年前に沖縄へ戻るタイミングで家づくりを始めました。当初は木造を中心に検討していましたが、依頼した建築会社が扱う「経年につれて強度を増すコンクリート」に興味を覚えるとともに、実直かつ熱心なスタッフの姿勢に共感。さらには「品質の高さはそのままに、環境性を高めたコンクリート製品が実用段階にある」と説明を受け、「わが家が新しい試みの第一歩になるのなら」と快諾しました。先ほど見た外壁をはじめすべての躯体には、この低炭素型コンクリートが使われています。

 購入した土地は広さ約47坪の南東角地です。必要な駐車台数を考えると、建築スペースはかなり圧縮されてしまいますが、2階建てにすることは念頭になく「動きやすさと家族の親密な距離感」を重視して平屋一択。その中で可能な限りの開放感を得られるように天井は高く、どこにいても家族の気配が感じられるすっきりとした間取りにして、庭代わりに屋上も使えるようにしました。

快適な団らん空間を濃縮した 経年成長するRC造住宅

ハード・ソフト両面で強度を増す住まい

 限られた空間を広く見せ、居心地の良さを高めることに成功したのは、建築プラスインテリアコーディネートの合わせ技。「生活空間全体を見渡せる対面キッチンがほしい」との要望を形にした直線状のLDKは約16畳の広さがあり、リビングの隣には2つの子ども室が並んでいます。仕切りの引き戸を開ければすべての空間が一つにつながり、隅々まで目が届きます。また室内には照明器具や電気配線があまり露出しないように設計されているため、視線の流れもとてもスムーズ。壁・天井・床・建具を白でまとめた明るいインテリアと相まって、実際の数字以上の広がりが感じられます。

 水回りはキッチン脇に集約しているので、家事効率も抜群です。その一角には家族の衣類を集めたファミリークローゼットがあり、各居室に余分な収納を置かずに済んでいることも、生活スペースをすっきりと見せられている大きな理由。洗濯・乾燥・片付け・身支度という一連の動作が一カ所で行えます。

 新居が完成したのは昨年11月。建築中は出張が重なり、なかなか現場に立ち会えなかったというご主人は、「最初の頃は感動というより、わが家の出来栄えをかみしめるようにして暮らしていました。最近になってようやく、これからの生活についてイメージするようになりましたね」。一方で奥さまは「手狭に感じることは一切なく、平屋で、この間取りで大正解でした。LDKと子ども室には程よい一体感があり、家族で毎日同じ時間を過ごしている実感があります」と感動しきり。室内に限らず屋上や駐車場も積極的に活用しており、バドミントンにバスケットボール、今夏には屋上でのグランピングも検討中。日に日にIさん一家のフレッシュな生活感が増し、日に日に家族の絆が強固になっています。

写真ギャラリー

快適な団らん空間を濃縮した 経年成長するRC造住宅

ディテールを意識した細かな工夫を積み上げて、限られた空間を最大限に活用する

「バイオマスフライアッシュ」を混和した世界初のRC造住宅
快適・安全な暮らしと財産を守り、沖縄の環境にも貢献する

スリースターズ株式会社設計部:金城柚穂さん

 コンクリートの性能改善を目的とした混和材料にはさまざまな種類があり、火力発電所から排出されるフライアッシュ(石炭灰)はその一つです。コンクリートに混ぜ加えることで組織の緻密化・高強度化が長期的に進み、雨水や飛来塩分の侵入を抑えて劣化を防ぐ効果があります。うるま市州崎にある株式会社リュウクス社は、独自のフライアッシュ製造技術によって、住宅をはじめ多くのコンクリート構造体の品質向上に貢献してきましたが、3年前に石炭灰の代用として、バイオマス発電に使われるパームヤシ殻の燃焼灰を原料にした混和材を開発しました。これからの低炭素社会実現に向けた画期的な製品であり、今回のIさん宅は、私たちが知る限り、この混和材を躯体全体に使用した世界初のRC造住宅です。

 取り扱い自体は従来のフライアッシュコンクリートと変わりなく、Iさん宅ではむしろ、平面・断面計画の調整に苦心しました。約24坪という限られた建築面積と予算の中で、家族5人がのびのびと快適に暮らせる生活空間をいかに創出するか。例えばリビングダイニングの天井は一般より高めの2.65メートルに設定し、余計な露出物をなくして縦方向の広がりを最大限に感じられるように、照明はダウンライトと間接光で統一。一方でキッチンスペースは、構造的に梁が現れてしまう高さに合わせて天井を張り、LDKの連続性を確保しつつも天井の高低差を生かして空間にメリハリを付けました。

 天井同様に、壁や床のラインもすっきりと収まるように緻密に計画しました。壁掛けテレビの位置に合わせてコード類を壁内に収めるなど電気配線に気を配り、Iさんの生活スタイルを詳しくヒアリングしてコンセントの数や位置を決定。その他、リビングと子ども室との仕切りには引き戸を採用し、有効開口幅を最大限に確保したり、各居室の収納は最低限にとどめ、簡易的な衣類掛けとして長押(なげし)フックを壁に造作したり、空間の余白を残すための細かな工夫を重ねました。

 東側前面道路は車通りが多く、他の三方を宅地に囲まれた環境上、採光・通風面でも念入りな計画が求められました。リビングダイニングにはメインの採光窓としてスリット調の窓を南・東に並べ、東側壁面は下半分をFIX窓、上半分を片開き窓にしました。子ども室、主寝室も二方向に開口部を設け、風通しを自在にコントロールできるように設計しています。

設計・施工会社

総合建設業・一級建築士事務所 スリースターズ株式会社

TEL:098-988-4258https://three-stars.co.jp

TEL:098-988-4258https://three-stars.co.jp

宜野湾市赤道1-5-1

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