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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

境界が溶け合うゆるやかさで つながりと夢を育み続ける家

境界が溶け合うゆるやかさで つながりと夢を育み続ける家

DATA
所在地:那覇市
設計:末吉栄三計画研究室 一級建築士 末吉 礁
敷地面積:173.32㎡(約52.5坪)
建築面積:97.87㎡(29.7坪)
延床面積:188.32㎡(57.1坪)
用途地域:第一種住居地域
構造:鉄筋コンクリート造
完成時期:2009年9月
建築:株式会社大宜見組
電気:株式会社アミティ・ジャパン
水道:泉水設備株式会社
キッチン:タカラスタンダード株式会社

閑静な住宅街に建つ、築11年になる末吉さんのお宅はご自身が設計。
高い吹き抜けの「宙」を核にして家中のいろんな場所やシーンが緩やかにつながり、境界レスなおおらかさで家族の”おうち時間”を豊かにしています。

※週刊かふう2021年3月5日号に掲載された内容です。

境界が溶け合うゆるやかさで つながりと夢を育み続ける家

新居の夢の一つが森をつくること。その流れで自ずと趣ある住まいに

「それまで住んでいたアパートが手狭になって」と、当時を振り返る末吉さんご夫婦。新居にあたっては、奥さまのお父さまが所有していた土地を譲り受け、建築士であるご主人が手腕を振るいました。家づくりのキーワードは高さ、広さ、そして森。というのも、この一帯はかつて、メダカが泳ぎ、うずらが生息する緑豊かな里山で、奥さまの遊び場でもあった思い出深い場所だそうです。
「せめて面影だけでも取り戻したい」
 我が家の完成後から、できるだけ自然のままにと、コツコツと植えてきた草木は100種類を越え、今では夏になると、近所の子どもたちが蝉取りにやってくるそうです。そんな自家製の森の一部を取り込んだ中庭には、姫うずらの大家族が「多分 羽くらい」と笑う奥さま。よく見ると、亀までも。さらに、ガラス1枚で隔てた室内では白ウサギの ユッキー が家中を駆け回っています。
 コンクリート打ちっぱなしの洗練された外観からはおよそ想像もつかない、動植物同居の自然色あふれる住まい。けれども、ここが街なかであることを忘れてしまうのは、そのためだけではありません。高い吹き抜けと、それに連動する大きな窓から差し込む豊かな自然光。風鈴を揺らす優しい葉風。そして足元の床をはじめ、ふんだんに使われている杉などの木の温もり。家を成す一つ一つに森の文脈を感じさせるように、末吉さんのお宅はさまざまな空間やシーンがゆるやかにつながりあい、暮らしにストーリーを生む面白みと心地よさにあふれていました。

境界が溶け合うゆるやかさで つながりと夢を育み続ける家

変化してゆくさまざまなこと。家族といっしょに楽しんでくれる家

 ご主人が主宰する「末吉栄三計画研究室」を、自宅1階の吹き抜けの広間に移したのは2年前。それまでこの場所は、15㎡の土間だったそうです。
「伝統的な日本家屋の土間は、沖縄の雨端と同じように内外をつなぐ役目もありますし、多目的に使える勝手のいい空間なんです」とご主人が話すと「子ども達が小さい時は、ここで三輪車に乗って遊んでいました」と奥さまが添えます。その事務所スペースの東隣には、道場を彷彿とさせる広々とした杉のフローリングが開放されており、視界を広げる一助にもなっていますが、実はこの大空間はご夫婦の主寝室。2年前までは家族5人で寝ていたそうです(小上がりのような数10センチの段差で、仕事の場とプライベートの場をつなぎ、分けています)。
 それにしてもなんて眠りに最適な空間。南側はテラスに面し、森の息吹をダイレクトに招きます。中には甘い香りを放つ夜香木もあり、花の時期になると天然のアロマで安眠へと誘うというのですから。

境界が溶け合うゆるやかさで つながりと夢を育み続ける家

 2階は、西側にレイアウトしたキッチンと、カウンターを挟んで展開する食事室が広がっています。その導線で屋上テラスに上がると、目に飛び込んでくるのは自然の趣を活かした庭園。
「洗濯物を干しながら、どんなふうに造っていこうかなあと、あれこれ考えるのも楽しくて」と奥さまの声が弾みます。2階に戻り、お子さん3人で1つの空間をシェアする 合同部屋 を見せていだきました。吹き抜けに面して全開放された空間はともて伸びやかな印象。「家ではどこにいても、何をしててもツーカーだよね」とご夫婦で笑います。
 ところで、末吉家にはリビングがありません。食事室や事務所スペース、テラスを中心に、家族が自然発生的に集まったその場が団らんの場となり華やぎます。子どもたちの勉強も至るところが場になり、「面白いことに、必ず家族の誰かがいる所に寄ってくるんですよ」。
 今年9月で築12年を迎える末吉さんの家。「でも、私たちの家づくりはまだ途中。やりたいことがいっぱいあるよねって、いつも夫婦で話しているんです」また一つ、新たなつながりの光景がみられそうです。

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