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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

木と風光に心安らぐ 丘上に建つ2階リビングの家

木と風光に心安らぐ 丘上に建つ2階リビングの家

DATA
設計: 株式会社 デザインネットワーク
     (担当/島田潤・新垣祐子)
敷地面積: 142.56㎡(約43.12坪)
建築面積: 68.12㎡(約20.60坪)
延床面積: 111.66㎡(約33.76坪)
用途地域: 無指定
構  造: 鉄筋コンクリート造
完成時期: 2022年8月
建  築: 米元建設工業 株式会社
電  気: 克電気工事 株式会社
水  道: 有限会社 海西工業

西海岸を見渡す丘の中腹に、職住一体の自宅を新築したOさん。
室内はどこにいても木で包まれたような安心感があり、2階LDKはテラスを介して外部空間と連続。
日夜を問わず自然の存在が身近に感じられる、安らぎに満ちた住まいです。

週刊かふう2024年9月13日号に掲載された内容です。

木と風光に心安らぐ 丘上に建つ2階リビングの家

家を建てたからこそ見えてくる景色がある

 床面積34坪の2階建ての空間に、親子3人の生活スペースと仕事部屋が一つ。打ち放しのコンクリートを外皮にまとい、壁・庇・花ブロックのシャープなラインが織りなすその立ち姿は、コンパクトな中にも凜とした表情をたたえています。
 一方でほとんどの内装は、温かみのある木で構成されています。無垢材のフローリングをはじめ、壁や2階天井はシナベニヤで化粧し、家具・建具はすべて木で造作。2階の床組みを現しにした1階天井は伝統民家さながらの迫力があり、無機的な外観とは対照的な安らぎ深い雰囲気に包まれています。
「自然素材に囲まれた家にしたかったんです」とOさん。木以外の要素にもこだわり、例えば1階の壁の一部は漆喰で仕上げ、仕事場の窓の外にはこぢんまりとした庭を設けました。もちろん眼下に広がる自然豊かな眺望の取り入れ方も重要なテーマであり、「プロの建築家にお願いして良かった。この場所に家が建ったからこそ見えてきた景色があり、感じられる風があります」。

 家づくりのスタートは4年前。漠然と持ち家を検討し始めたタイミングで現在の土地を友人から紹介され、職住を兼ねた一戸建ての注文住宅に計画を絞りました。当初は木造を第一候補にしていましたが、依頼した建築家の「建物の外側は、耐久性が高く台風などに強いコンクリートでつくり、内部はライフスタイルの変化に応じて組み替えやすい、温かみのある木造でつくる」という考え方に共感。提案された2階リビングのプランも、自然と調和したデザインのテイストも、期待通りに納得のいくものでした。

木と風光に心安らぐ 丘上に建つ2階リビングの家

周囲の海や森に向かって視線がスムーズに流れる

 Oさん宅は2階が生活の中心の場。南側テラスに面してワンルーム的なLDKが置かれ、室内からの眺望が最も映えるように、窓の位置やテラスの向きが設計されています。リビングとテラスは段差なくフラットにつながり、頭上には深い庇が延びて日差しや風雨を遮ると同時に、眼下に広がる西海岸の景色へと視線をスムーズにいざないます。
「風通しが本当にいいんですよ。窓を少しでも開けて子ども室の戸をオープンにすれば、フロア全体に風と光が行き渡ります」。
 LDKに隣接する子ども室は可変式。中央の造作棚を挟んでシンメトリーな造りになっており、両サイドにはロフトが設けられています。またキッチンの奥にはサニタリーが一カ所に集約され、毎日の家事や身支度を効率的にこなせます。

 1階は玄関を自宅用・来訪者用に分けるなど、公私の空間をしっかりとゾーニング。仕事場へは室内から行き来できる通路を確保していますが、いつでも集中できて心を整えやすい、落ち着いた環境になっています。築後2年の間に庭の植栽もすくすくと育ち、今では1階の雰囲気づくりに欠かせないシンボル的な存在になりました。
「2階も緑の眺望が好き。キッチン背面の窓の外には豊かな森が広がり、この土地の魅力を再認識しました」。テラスからの眺めも海側とそれ以外では趣が異なり、「畑越しに沈む夕日をばっちり鑑賞できます」。
 日常のささやかな幸せを切り取れるのも、建築の成せる業。周囲の自然のリズムと歩調の合った、穏やかな時の流れを楽しんでいます。

写真ギャラリー

木と風光に心安らぐ 丘上に建つ2階リビングの家

耐久性×居住性。コンクリートの中に木造の空間をつくる

内外の境界を曖昧にして眺望を日常に取り込んだ、ファジーな空間構成。
将来のライフステージの変化に柔軟に対応した、可変性のあるプランニング

建築家:島田潤

 眺望を最大限に生かす上で、最初に留意したポイントが2つ。敷地は坂の途中にあって南東道路に面し、上下に隣家が並んでいるため、周囲の建物の存在が気にならないように視線を誘導する必要がありました。
 また開放感と居住性を両立するには日射対策が必須です。デザイン性も担保しつつ、無理なく日差しをコントロールすることが求められました。

 全体的なプランの方向性として、坂の傾斜に沿って南西面を建物正面に定め、より開けた眺望を得るために、生活の中心の場を2階に置くことはすぐに決定しました。LDKは間仕切りのないワンルーム的な構成とし、海の眺めが最もよく、隣家が視界の端から切れる場所にキッチンを配置。窓の外には最大1.8メートルの庇を延ばして「雨端」空間をつくり、直射日光を遮ると同時に内外の境界を曖昧にして、眼下の景色や周囲の自然が身近に感じられるように配慮しました。

 構造的には、家の躯体はRCでつくり、内部は木造で組み上げたハイブリッドなスタイルです。コンクリートは強度や耐久性に優れているのはもちろんのこと、設計の自由度が高く、ボリュームの大きな空間や大開口を導入しやすいというメリットがあります。
 一方で木造は、温かみのある雰囲気もさることながら、他の構造と比べて改装・変更するのが比較的容易です。台風、塩害といった厳しい自然環境に耐えながら、将来の環境変化やライフスタイルに応じて長く快適に住まえる住居の形態として、私たちの事務所では積極的にご提案しています。

 プランづくりでは最初からつくり込みすぎず、さまざまな変化を許容できるだけの柔軟性を持たせることも大切です。例えばOさん宅の2階は、LDKと隣接する子ども室の戸を開け放てば、一つの連続した空間が現れます。子ども室も中央に造作棚を置いて仕切っているだけなので、移動すればさらにフロア全体の一体感が高まります。
 デザインの統一感を保つとともに空間を有効活用すべく、ほとんどの家具や収納棚は造作で用意しました。子ども室のロフトは私から提案したもので、「今は不要でもあれば使おうとするはずだから」とOさんに説明。空間の立体的な知覚が創造力アップに寄与することも少なからず期待しています。

設計・施工会社

株式会社デザインネットワーク

TEL:098-858-2008http://www.dn-okinawa.com/

TEL:098-858-2008http://www.dn-okinawa.com/

那覇市山下町1-24 サンビル3F

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