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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

敷地高低差を楽しさに変換 シーンが幾重にも展開する家

敷地高低差を楽しさに変換 シーンが幾重にも展開する家

DATA
設  計: 株式会社GAB
     (担当/濱元宏、豊崎孟史)
敷地面積: 177.01㎡(約53.55坪)
建築面積: 84.76㎡(約25.64坪)
延床面積: 158.34㎡(約47.90坪)
用途地域: 第一種低層住居専用地域
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2022年9月
建  築: 株式会社GAB
     (担当/豊崎孟史)
電  気: 屋宜電気工事
     (担当/屋宜宗春)
水  道: ライフ工業(担当/我喜屋奨)
キッチン: TOTO

東西両サイドの窓を貫通するようにして青空を望む、明るさに満ちたオープンな外観。
高低差のある敷地は家の各所に多様な景色を生み出し、幾つもの居場所を形成。
暮らすほどに興味をかき立てる、楽しい家になりました。

週刊かふう2024年9月27日号に掲載された内容です。

敷地高低差を楽しさに変換 シーンが幾重にも展開する家

同じ空間にいても場所ごとに景色が変わる

「楽しい家にしたかったんです」と繰り返すOさん。家族で過ごす時間はもちろんのこと、ゲストと一緒ににぎわう時も、一人静かにくつろぐ時も、いろいろな楽しみ方ができる家がいい。だから依頼先を選んだ1番の決め手は、「提案してもらったプランを見て、すごく楽しそうな暮らしがイメージできたから」。築後2年たった今でも、わが家への興味が尽きることはありません。

 Oさん宅は床面積約48坪の2階建て。なだらかな坂に沿って広がる住宅街の北東角地にあり、敷地西方には本島南部一帯の自然豊かな景観が開けています。この見晴らしの良さを生かせるように、家族が集まる生活のメインスペースは2階に配置して、1階は個室と水回りをまとめたプライベートフロアに。2階LDKには深い庇に覆われたテラスが隣接しており、大開口を介して室内から室外へ、シームレスに空間がつながっています。

「窓からの見え方にはとことんこだわりました」とご主人。LDKを取り巻く四方の壁にはさまざまな高さに窓があり、「同じ部屋にいても場所ごとに景色が変わるから、どこで過ごすかによって違った気分を楽しめます」。
 外からの見え方にも特徴があります。駐車場側に立って建物を眺めると、階段回りの大きな窓から2階テラスを通り越して反対側の青空まで、視線が一気に抜けていきます。「この景色が好き」とOさんが話すのも納得の壮観です。一方ではこれだけオープンなデザインにもかかわらず、リビングなどの生活場面は不思議と目に入らず、プライバシーはしっかりと守られています。

敷地高低差を楽しさに変換 シーンが幾重にも展開する家

家中に居場所があり植栽に心安らぐ

 Oさん宅が建つ敷地は、約2メートルの高低差がある台形状の変形地です。土地の購入時から建築士に相談し、プランの工夫によって難条件を克服。1階床は駐車場から1メートルほど掘り下げた位置に置かれ、法律の上限いっぱいまで建物のボリュームを確保しながら、敷地形状に沿うようにして各居室がデザインされています。

 2階LDKは最大高さ約3・3メートル、広さ約20帖のワンルーム的な空間です。無垢材のフローリングと色調を合わせた杉板が天井を覆い、木に包まれたような温かみを演出。壁際には造作のスタディーカウンターや本棚、ベンチが並び、家族と時間を共有しながら自分だけの世界に没頭することもできます。
「家のあちこちに居場所があるから、まったく飽きが来ないんです」とご主人。リビングからテラスを挟んだ対面には和室があり、LDKとの距離感がちょうどいいのか、「子どもたちが友人を連れてくると、だいたい和室で一緒に遊んでいますね」。

 1階は基本的に「眠るだけの場所」と位置付けていましたが、徐々に「2階とは違った魅力を感じるようになりました」。理由の一つは植栽です。新築後、外構の緑化計画を進めているうちに、庭木や鉢植えを見て回ることが夫婦共通の趣味になりました。
「寝室の外に植えたオリーブの木がすくすくと育ち、今では窓を覆うほどに大きくなりました。最近は1階テラスに椅子を置いて座り、手にかけた植栽をぼんやりと眺めている時間がお気に入りです」。
 目指していた楽しい家づくりは、これからもまだまだ続きます。

写真ギャラリー

レベル差がもたらす視線の変化や空間の広がりを無理なく建築に生かす

台形状の敷地に沿って、縦横のボリュームを最大限に確保
周辺環境とのオープンな関係性を保ち、町並みに貢献

一級建築士:濱元宏さん、豊崎孟史さん

 Oさん宅を特徴付けるシーンの一つが、子ども室から駐車場を”見上げた”時のものです(下記「家づくりのヒント」欄)。窓を挟んで立つ2人の目線の高さは大きく異なり、駐車場の奥には2階の廊下が間近に見えます。他の住宅では決して実現しえない、オリジナルな光景です。

 子ども室・駐車場・2階の間のこうした関係性は、敷地の造成方法に起因します。Oさん宅が建つ敷地内の高低差は約2メートル。地盤の状態を見定めながらGL(地盤面)をほぼ中間位置に設定し、駐車場は最も高い位置にある東側道路面に配置したことで、1階フロアと駐車場の床レベルに約1メートルの差が生まれました。さらには最大限の開放感を求めた2階に対して1階の天井高を抑えたことにより、駐車場と2階の距離が短縮。また、駐車場に面した2階の窓は、あえて階段の一部が見えるまで下へ引き延ばし、1階テラスからも子ども室同様の多層性が感じられるように工夫しています。

 西方に眺望が開けた場所のため、プラン面では、2階建てにして上階にLDKを置くことを最初からご提案しました。リビングの横には西日を防ぐ緩衝帯として、深い庇に覆われたテラスを設置。建物全体としては限られた空間を目いっぱい生かすべく、敷地境界線に沿った台形の平面形状とし、道路斜線の上限まで天井高を確保しました。LDKの屋根には北側斜線制限に即し、緩やかな傾斜を付けています。

 数々の制約がある中で、デザイン性・居住性についても妥協せず追求しています。例えば玄関頭上に架かる屋根は、2階キッチンや1階子ども室の窓をカバーできる位置まで伸ばすとともに、重たい印象にならないように、薄くシャープなフォルムに仕上げています。表に出ないところでは、配管類はすべて建物内に収め、外観の美観を維持。また、家と町並みが緩やかにつながってほしいと考え、敷地外周のフェンスなどは一切省きました。築後2年がたち、植栽や家庭菜園が想像以上に充実してきた様子を見て、とてもうれしく思っています。

設計・施工会社

株式会社GAB(ギャブ)

TEL:098-987-7331http://gab.okinawa/

TEL:098-987-7331http://gab.okinawa/

豊見城市平良132-8 光陽マンション103

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