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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

未来を先取りしたサステナブルな木の家

未来を先取りしたサステナブルな木の家

DATA
家族構成:夫婦、愛犬1匹
所在地:金武町
設計:株式会社琉球住樂一級建築士事務所
(担当/伊良皆盛栄、嶺井典子)
敷地面積:380.25㎡(約115.0坪)
建築面積:124.63㎡(約37.70坪)
延床面積:1階/112.09㎡(約33.90坪)
2階/27.32㎡(約8.26坪)
用途地域:都市計画区域外
構造:木造2階建て
完成時期:2018年5月
施工:建築/株式会社琉球住樂(担当/玉城和樹)
大工/真内装(棟梁/伊佐)
電気/有限会社山城商工
水道/大成設備工業株式会社
左官/有限会社仲松左官
キッチン/琉球住樂オリジナル
外部建具/株式会社エクセルシャノン
内部建具/有限会社照屋木工所

海と山を身近に感じるのどかな住宅街に、昨年5月に新居を構えたOさんご夫妻。無垢の木と漆喰でできた健康的な住空間に、ご主人発案のエネルギーマネジメントシステムを組み入れた、完全オリジナルのスマートハウスです。

未来を先取りしたサステナブルな木の家

創エネ・蓄エネ・省エネのシステムを自ら構築

 家づくりはやっぱり面白い。主体的に関われば関わるほどなおさら。自分たちの思いを受け止めてくれる建築士と一緒にプランを考え、素材を選び、さらに一歩踏み込んで、エネルギー回りをコントロールできるようにしたのが今回のOさん宅。太陽光発電と自前の蓄電池を用意し、家電・設備機器を賢く制御しながら「電気の半自給自足生活」を楽しんでいます。
「システム関係の仕事に携わっていることもあり、せっかく家を建てるなら、自立した電力供給が可能ないわゆるスマートハウスづくりにチャレンジしたいと考えていました。家庭での導入イメージをつかみづらい部分もありましたが、専門的すぎるともいえる細かなこだわりを、建築士さんが上手にプランに落とし込んでくれました」とご主人。
 Oさん宅のエネルギーシステムを概観すると、軒の深い赤瓦の屋根には5.25kwの太陽光発電システムが搭載されており、日中はこの発電分を自家消費します。使い切れず余った電気は売電せずに、敷地奥に置かれた蓄電池へ。太陽光で創エネできない夜間や雨天曇天時はここから電気を取り出し生活電力に充てるとともに、深夜は一般の電気系統につないで朝まで充電しておきます。そして一連のこうした動作が自動的に行われるように、ご主人自らシステムを構築しました。
 貴重な電気は1ミリアンペアたりとも無駄にはしません。家中の設備機器はHEMS(住宅エネルギー管理システム)に接続して「見える化」し、モニターをチェックすればその時々の電気と水の使用量が一目瞭然。もちろんスマートスピーカーだって導入し、音声やスマートフォンで照明や家電を遠隔操作できます。また自給自足の家を目指した結果、「災害にも強い家になって、昨年の台風による停電も大きな影響はありませんでした」。
 一方では「夏場の日中のように、発電量が多すぎる場合にどう使いこなすか」が目下の課題であり、現在は実験的に「空気中の水分から水を製造する装置」と「LEDを使った野菜の水耕栽培キット」の動力源に充当中。水と野菜、あとはタンパク質の供給源が整えば、電気より先に食糧の自給自足が実現可能かも。ご主人も話を合わせて「魚を飼っているからね」とご冗談。

未来を先取りしたサステナブルな木の家

土間とフラットにつながった開放感あふれる木造空間

 仕事がようやく軌道に乗り、「そろそろ家づくりを」と考える余裕が出始めたのが約10年前。「私たちは夫婦2人暮らし。会社があるのは那覇市内だけど、自然を身近に感じる環境でのんびり生活したい」と現在の土地を購入しました。完成見学会を回る中で依頼した建築会社と出会い、「一目ぼれでした。木の家の魅力を知ったのも、そのときが初めてだったかもしれません」。
 以後はスマートハウスの構想をまとめつつ、建築士と一緒にプランを練ること数年。Oさん宅の設計で特徴的なのは、玄関の土間とリビングその他の生活空間の床レベルが、フラットにつながっていること。一般的な住宅と比べて「床が上がらない」分だけ天井高が増し、勾配天井に覆われた吹き抜けは一段と開放的に。また玄関正面にある和室は式台の高さの分だけ、LDKに対して小上がりのような空間になっています。
「土間のある暮らしがしたい、将来の生活を見越して極力バリアフリーで、という話をしている中で、このような形に落ち着きました。本来はサンルーム(土間)をもっと活用したかったんですけどね。キッチン側の半分のスペースは、新築後に飼い始めた愛犬の居場所になりました」。
 室内には幾本もの杉の柱が立ち並び、頭上には同じく杉の梁が豪快に折り重なっています。そして壁の仕上げに漆喰を用いた自然味あふれる様相は、Oさんがほれ込んだ、建築会社の標準的な家づくりのスタイル。当初導入予定だったシステムキッチンも、実際の使い方と雰囲気を優先して変更し、オリジナルでしつらえてもらいました。

未来を先取りしたサステナブルな木の家

 居室の数自体は控えめですが、一部屋一部屋が個性的。例えばキッチン奥にある家事室は、書斎兼バールームとしても活躍し、「家の中で一番落ち着くかも」と高評価。ユニット階段で上り下りする2階オープンスペースは、名の通り使い方は未確定ですが、現在はご主人が得意の機器回りを含めて着々と改造中。果たしてどんな空間に変身するかは、またの機会のお楽しみ。

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