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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

まるで木陰の快適さ。自然素材をまとった 風を味わうための家

まるで木陰の快適さ。自然素材をまとった 風を味わうための家

DATA
設  計: 木脇ホーム(担当/福森勇)
敷地面積: 230.40㎡(約69.69坪)
建築面積: 86.04㎡(約26.02坪)
延床面積: 93.56㎡(約28.30坪)
用途地域: 第一種低層住居専用地域
構  造: 木造軸組工法
完成時期: 2021年10月

自然に吹く風には、作り物では感じられない、独特の匂いや温度感を含んだ心地よさがあります。
名護市の住宅街に建つYさん宅は、風をふんだんに取り入れると同時においしく味わうための工夫が施された、2階建ての木造住宅です。

週刊かふう2022年10月21日号に掲載された内容です。

まるで木陰の快適さ。自然素材をまとった 風を味わうための家

心地いいという感覚を裏付ける、家づくりの技法に納得

 杉板の外壁に囲まれた片流れ屋根のシンプルな外観と、軒先にはためく白い布。夫婦と育ち盛りの子ども3人、どこにいても何をしても自然と呼吸が深くなるのは、心身ともにリラックスできている証しです。南面の庭に向かって大きく取られた窓からはたっぷりと風が舞い込み、リビングの吹き抜けなどを介して家中に運ばれていきます。

「毎日が木陰で暮らしているような感覚です。床や壁の触感も常にサラッとしていて、とにかく快適ですね」と笑うご夫妻。軒下の暖簾(のれん)は奥さまのお手製で、「住宅街だから多少の目隠しは必要だけど、せっかくのオープンな雰囲気を損ねたくなかった」という思惑に、意匠までぴったりとハマりました。布が風に揺れるたび、家族で味わうおいしい空気がつくられているようです。

 Yさんの新居は、床面積約26坪の2階建ての木造住宅です。今から4年前、新しく開発された住宅地にある広さ69坪の土地を購入し、数ある候補先から「理想的な家づくりをしている」と共感した建築会社に依頼しました。1番の決め手として、奥さまは「心地いいという直感、フィーリング」を挙げ、ご主人はそれを裏打ちする理論的背景を調べ上げました。

「住宅である以上、まずは安全・頑丈であることが最優先。台風・シロアリ対策が万全であるのはもちろん、実は沖縄で30年以上実績のある会社だと知り、心強さを覚えました。また飫肥杉などの材料や、伝統的な沖縄民家をベースにした工法・技術が、とても理にかなっていることも分かったので」と振り返ります。

 柱や梁、フローリングに使われている宮崎県産の飫肥杉は、サバニ舟などの材料として、古くから沖縄でなじみのあるもの。リビングと庭の中間にある軒下のデッキ空間は、強烈な日差しを防ぎつつ涼風を招く「雨端」の現代版です。

まるで木陰の快適さ。自然素材をまとった 風を味わうための家

心も形もオープンに。窓を思い切り開けて、風を感じながら暮らす

 Yさんが求めた生活スタイルは、「窓を思い切り開けて、風を感じながら暮らす」こと。間仕切りがほどんとなく、LDKを中心に2階フリースペースや1階個室が連続したオープンな間取りは、「風が効率よく巡るように」とお二人の要望を具現化したものですが、建築会社から提示されたファーストプランを見た時には「キッチンにレンジフードがないなんて」と想像以上の開放感にびっくり。実際に生活してみると、料理中に熱や臭いが充満することはなく、天井の勾配に沿うように、風に乗って北側の窓の外へ押し流されていきます。

 杉材と双璧をなすインテリアの白い壁は、日本古来の土壁に似た成分・機能をもつ内装仕上げ材「Moiss(モイス)」です。生き物のように呼吸して空気の質を改善する働きがある他、有害物質を含まず、使用後は土に還元できることを知り、建築会社から提案を受けると「杉の無垢材と同様、人にも環境にも優しい材料で家をつくれる」と快諾。適度な調湿作用があるおかげか、梅雨時でもジメジメした不快感を覚えることはありませんでした。

 今回の掲載日を迎える頃が、ちょうど築後一周年にあたります。ちょっぴりと日焼けして味わいを増した外壁を眺めながら、最近は「家族の成長に合わせて、家も一緒に育てていきたい」と感じることがしばしば。「家とは価値観そのものですね。わが家のように経年変化を前提とした家で暮らせば、経年変化を楽しもうとする感性が養われ、どこにいても家族の顔が見えるオープンな間取りは、家族がいつもそばにいることの安心感を、無意識のうちに意識付けてくれるでしょう。子どもたちにとって、将来いつでも帰れる場所、心のよりどころにできる場所となるように、大切に育てていきたいですね」。

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まるで木陰の快適さ。自然素材をまとった 風を味わうための家

熟練の木造技術で資産価値を保全。大工の経験”知”を土台にした家づくり

木脇ホーム:福森勇さん

 家づくりにゴールはなく、沖縄の気候風土により適した工法・スタイルを求めて、現在も模索が続きます。
 沖縄で住宅の提供を始めて30年以上、たくさんの施主さまから支持をいただき、今までやってこられた要因の一つには、ベテラン大工の経験知の積み上げがありました。理想を現実に落とし込み、本当に快適で丈夫な住まいをつくるには、現場で格闘する職人の技術・熱意が不可欠です。雑多な情報が飛び交う今だからこそ、私たち木脇ホームではもう一度原点に立ち返り、「大工に始まり、大工で終わる」家づくりを徹底していきたいと考えています。

 今回のYさん宅も、滑らかな円弧を描く板張りの壁や、仕口を固定して強度を高める伝統的な「込み栓」といった技術が隅々まで生かされており、50年以上先まで安心して住み継げるような、価値ある資産を提供できたと自負しています。

 最近相談に来られる方の傾向は大きく二つに分かれ、一つは昔ながらのウチナーヤーを忠実に再現したいというもの、もう一つはYさんのように、自然と共存してきた沖縄民家の知恵を生かしつつ、現代のライフスタイルに適した「いい家をつくりたい」というケースです。
 一口に「いい家」と言っても捉えどころはさまざまですが、居住性や機能性、持続可能性の観点から、内装材には今回使用した「Moiss(モイス)」を提案する機会が増えてきました。調湿・消臭・防カビ・耐火といった性能はもちろんのこと、下地に石こうボードを使わず、モイス単体で仕上げ材にできる点が大きなメリットです。有害物質を含まず、粉末にして土に還元できるので、取り壊しても産業廃棄物が発生しません。なお、柱や梁などの構造材をはじめ、内外装の木部にはすべて、自社グループで育成・伐採・加工・調達した宮崎県産材を使用している点は、どの家でも変わりません。

 設備面では新しい技術として、県内の公共施設でも導入実績がある「UFB(ウルトラファインバブル)」を水回りに採用しました。直径1㎛未満の気泡を水中に発生させ、家中の配管に巡らせることで微細な隙間に潜む汚れまでも取り除き、建物全体を清潔な状態に保てるとされています。

設計・施工会社

沖縄市松本855-2

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