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ロングセラーズ by module #2 世界で最も売れた3脚の椅子

ロングセラーズ by module #2 世界で最も売れた3脚の椅子

週刊かふう2023年 12月15日号に掲載された内容です。

 

世界で最も売れた3脚の椅子

CH24(Yチェア)/カール・ハンセン&サン

SERIES7(セブンチェア)/フリッツ・ハンセン

No.14(No.214)/トーネット

 

ロングセラーズ by module #2 世界で最も売れた3脚の椅子

中国椅子がルーツの大人気チェア

 今、モジュールで最も人気の高い「Yチェア(CH24)」は、1950年にデンマークのカール・ハンセン&サン社から発売され、70年以上たった今でも世界中で50万脚以上売れているベストセラー商品です。

 北欧を代表するデザイナーのハンス・J・ウェグナーが、17~18世紀の中国の椅子にインスピレーションを受け、1944年にフリッツ・ハンセン社から発表した「チャイナチェア」をベースに、リデザインをして完成させたといわれています。

 余談になりますが、4年前の火事で焼けてしまった首里城に展示されていた玉座は、背からアームにかけての笠木(カサギ)とそれを支える束(ツカ)のデザインがよく似ていませんか? やはりルーツは中国です。

 Yチェアは、およそ10万円からとダイニングチェアとしては値が張ると思われがちですが、ベースとなったチャイナチェアは、なんと100万円超え。約10倍の価格です。クオリティーを追及したチャイナチェアに対し、Yチェアはマーケットを意識して価格を抑えるために材料、加工技術、構造にさまざまな工夫が施された、ウェグナーの最高傑作といえるでしょう。


ロングセラーズ by module #2 世界で最も売れた3脚の椅子

モダンインテリアのスタンダード

 二つ目は、同じデンマークのフリッツ・ハンセン社から1955年に発売された「セブンチェア」。Yチェアより一桁多い700万脚以上売れているとか。

 スチール脚と積層合板で構成されたシェル型チェアは、コペンハーゲン空港や国連の会議室でも採用されたことがあるようです。日本においても、ホテルやオフィス、図書館、美術館、大学などで使われ、沖縄では現・糸満市役所の新築時に数十脚が納品されていますし、那覇市のオール電化体験施設カエルぴあなはには、青いセブンチェアがおしゃれに配置されています。Yチェアよりも桁違いに出荷台数が多いのは、このようなコントラクト需要が多いことも理由でしょう。

 もちろん個人宅でも人気です。座り心地もよく、シンプルモダンな空間に映えるのは、やはりセブンチェア! ですね。


ロングセラーズ by module #2 世界で最も売れた3脚の椅子

家具作りを変えた歴史的名作

 最後に紹介するのは、160年以上前の1859年に発売され、現在までに2億脚以上売れたといわれる、ドイツのトーネット社から発売された「No.14」というベントウッドチェアです。

 デザインを手掛けたのは、ドイツ出身のミヒャエル・トーネット。イギリスの産業革命の波を受けたオーストリアとドイツで椅子の工業製品化(大量生産)に成功。角材を蒸気で蒸して曲げる技術は、家具作りの歴史を大きく変えました。さらに、世界各国にパーツで出荷し、現地で組み立てて完成させるノックダウン(組み立て家具)を世界で初めて作った人でもあります。

 ウイーン、チェコ、ドイツと生産拠点を移しましたが、現在はドイツのトーネット社が正規の継承メーカーとなり、No.14を仕様変更した後継モデル「No.214」を販売しています。また、チェコでトーネット製品を製造していたTON社が当時のままのNo.14を作り続けているほか、さまざまなメーカーが同じデザインの椅子を生産。いまや世界中のあちこちのカフェで使われています。

 誰もが“どこかで見たことがある”椅子ですが、家具の歴史を勉強した人以外、その名を知る人は少ないのでは? Yチェアやセブンチェアと違って本物・偽物を語る人も見たことがありません。No.14は、名前を知られていないにもかかわらず、世界のスタンダードとなった、偉大な名作といえるかもしれません。

 メーカーが出荷台数を公表し、ベストセラーとして歴史に名を残している名作チェアは、この3脚くらいでしょう。

ロングセラーズ by module #2 世界で最も売れた3脚の椅子

※価格はいずれも『週刊かふう』掲載当時のものです

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