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琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A お墓で法事はできますか?

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A お墓で法事はできますか?

週刊かふう2022年3月11日号に掲載された内容です。

お墓で法事はできますか?

Q:実家が老朽化し、数年前、トートーメーをお墓に入れました。今年、父の十三回忌があります。法事は家の仏壇でしないとバチが当たる、いやお墓でもできると、兄弟姉妹の意見が分かれています。私はお墓で法事をしたいと考えていますがいかがでしょうか?(恩納村・Mさん・60代・女性)

A:近年、沖縄では、さまざまな理由により、トートーメーの将来を心配するとき、お墓の中に入れるご判断が増えています。このことを専門用語では、遷座供養(せんざくよう)といい、永代供養(えいたいくよう)・昇天供養(しょうてんくよう)とともに、多くの方々に利用されているトートーメー継承問題の解決方法の一つです。

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A お墓で法事はできますか?

《永代供養・昇天供養・遷座供養》
 永代供養とは、ご寺院さま・公益財団法人さまなどに、トートーメーを永久にお預けするご供養のことをいいます。ご寺院さま・公益財団法人さまなどでは、折に触れ、ありがたい読経(どきょう)をお勤めしていただけると思いますので、手厚いお敬いが安心のご供養となります。

 また、昇天供養とは、別名、お焚き上げ供養ともいい、トートーメーをお焚き上げ(ご焼却)申し上げ、灰をお墓のウコール(香炉)にウンチケー(案内・収めること)するご供養のことをいいます。ご寺院さま・ユタなどの先生方にお立ち合いいただき、トートーメーのお札を削ったり、灰をお墓のウコールにウンチケーするなど、ご遺族の心のこもった親身なご供養となります。

 そして遷座供養とは、お仏壇からお墓などに、トートーメーを遷座(場所の移動)申し上げるご供養のことをいいます。ご実家のお仏壇・お墓は、ご遺族の方々からすれば、身近な場所へのご移動かと思いますので、遠慮なく、親しみやすいご供養となります。

 今回のご相談の回答としましては、Mさんのご実家のトートーメーは遷座供養を選択され、現在はお墓にありますので、お墓でご法事をお勤めされることは、いささかも問題がないということになります。まずは、ご安心いただければと思います。
 ここで大切なことは、「法事は家の仏壇でしないと」というご兄弟姉妹さまのご意見も、とても重要であるということです。いろいろな理由からかと思いますが、このご意見について沖縄のしきたりを参考として専門的に考えるとき、グソーヌジョウミチ論としてとらえていくことができます。

《グソーヌジョウミチ論とは》
 グソーヌジョウミチ論とは、グソーヌジョウミチ(後生の門道)=ウヤファーフジ(ご先祖さま)がお住まいになる後生・極楽浄土(ごくらくじょうど)の正面玄関の入り口が、どこにあるのかという論法(考え方)のことをいいます。

 古来より、その入り口は、ティーダ(太陽)の沈む西(イリ)の方角にあるという、仏説観無量寿経(ぶっせつかんむりょうじゅきょう)に代表される日没観(にちもつかん)の考え方があります。この考え方を根拠にしたものに、大切な故人さまがお亡くなりになったときの枕の向きは、ニシマックヮ(北枕)と同様、イリマックヮ(西枕)にするという沖縄のトータビ(唐[遠]旅)といわれるご臨終の作法・心得があります。

 また、同じく、後生・極楽浄土の正面玄関の入り口はお仏壇・お墓・トートーメーの正面であるとの論法もあります。この考え方を根拠にしますと、ご兄弟姉妹さまの「法事は家の仏壇で」の考え方も、Mさんの「いやお墓で」の考え方も、後生・極楽浄土の正面玄関の入り口の理にかなっていることになりますので、双方とも思慮深い、高い見識でのご意見の相違ではないかと思います。

 昔、恩師から「お仏壇は故人さまの現住所、お墓は故人さまの本籍地」と、ユニークなお仏壇とお墓の関係をご教授いただいたことがあります。お仏壇とお墓、多少の違いこそあれ、故人さまを偲ばせていただく上では、心は一つということなのでしょう。
 私見ではありますが、今年、十三回忌のお父さまも、お仏壇で行うか? お墓で行うか? 迷われているお子さま方をご覧になりながら、グソーから頼もしく、安心されておられるのではないでしょうか。

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A お墓で法事はできますか?

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