琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 遺骨をペンダントにしてもいいですか?
週刊かふう2024年7月12日号に掲載された内容です。
遺骨をペンダントにしてもいいですか?
Q:今、考えていることは、大好きな祖母にもしものことがあったとき、遺骨を分けてペンダントにしたい、肌身離さず、一緒にいたいという思いです。母や知人に相談すると、できる、できないで意見はバラバラです。沖縄では、どのように考えているのでしょうか? ちなみに、私は名古屋に住んでいます。(愛知県・Tさん・30代)
A:Tさん、大切な人と一緒にいたいとの思い、十分伝わってまいります。沖縄県内と沖縄県外では、ご遺骨を分ける『分骨(ぶんこつ)』のとらえ方が変わってくることがありますので、以下、詳しくご説明させていただきたいと思います。
分骨とは
分骨とは、故人さまのご遺骨を分けてご供養することをいいます。諸説のうち、昔、インドのお釈迦(しゃか)さまがお亡くなりになったとき、荼毘(だび〈火葬〉)に付(ふ)された仏舎利(ぶっしゃり〈お釈迦さまのご遺骨〉)は、その偉大なるご功績を敬い、関係する仏弟子(ぶつでし)・部族の方々に8等分(10カ所に分けられたとの諸説もあり)され、ご縁のあるご寺院さまへ納められたとの資料があります。
仏舎利を希望する人々は、以降も後を絶たず、仏舎利をお持ちになることができない方々は、仏舎利を納める卒塔婆(そとうば・そとば)や仏舎利塔(ぶっしゃりとう)へお参りし、そのご仏前へお供えした宝石などを仏舎利に見立て、おのおのが持ち帰り、それぞれのご寺院さまへ納められたとの由来があります。
分骨は、宗教・宗旨・宗派により、故人さまのご遺骨をお墓へ納骨しつつ、一部をご本山のお墓や納骨堂へ納めるために選択されたり、別々に生活する家族・親族が、大切な故人さまを自分たちのお墓やお部屋でご供養したい、Tさんのように、ご遺骨を粉上にしてペンダント・ネックレス・指輪などに加工して肌身離さずつけていたいなどの理由により行われるようです。
分骨の賛否
一方、分骨には賛否があり、故人さまのご遺骨を分けるということは、お身体をバラバラにすることにつながる、魂が引き裂かれる、故人さまが迷うことになるなどの考え方もあるようです。
沖縄のしきたりの俗説では、故人さまの『チュブルブニ(頭蓋骨)』『喉仏(のどぼとけ)』を『心』とし、それ以外のご遺骨を『体』とするとき、分骨は、『心』と『体』が別々になるので、故人さまが成仏するとき、不都合が生じるという、「輪廻(りんね)ナラン」=「グソーゴクラク(後生極楽〈成仏〉)ナラン」とのウグヮンクトゥバ(御願言葉)を語られる、ユタ・ウサギヤ・サンジンソウ・カミンチュなどの先生方もおられるようです。
分骨するときの注意点
まずは、喪主さまや祭祀継承者(故人さまのお位牌やご遺骨を継承する方)さまに相談して、分骨のご許可をいただくことが賢明かと存じます。できれば、ご遺族のご意見を広くうかがうことも必要かと存じます。
ご許可をいただけるようでしたら、葬儀社の担当者さまへ分骨の思いを伝え、分骨する骨つぼなどの容器を準備していただき、火葬場での収骨の際、ご遺骨を分けていただくことになります。
分骨は簡単なことではなく、『分骨証明書』が必要になります。葬儀社の担当者さまへご依頼し、火葬場やしかるべき機関から発行してもらえるよう、事前の打ち合わせをお勧めいたします。
沖縄では、全骨(ご遺骨を分けない状態)・分骨に関わらず、ご遺骨の移動には、サン(ススキ3本を結ぶ祭具)と黒傘を使用することがありますので、こちらも事前のご準備をお勧めいたします。
なお、喪主さまや祭祀継承者さまなどからご許可をいただけない場合、分骨は行われない方が賢明かと存じます。このとき、沖縄のしきたりでは、実際の分骨はできなくても、マブイグミ(魂込め)という考え方があり、例えば、故人さまを納骨する墓地の石ころ・土・砂などを3回、7回、9回、12回のいずれか拾い、それらをご遺骨に見立て、ご供養するありがたい考え方が継承されています。
石ころ・土・砂などとはいえ、こちらもやはりご遺骨に準ずるものですので、念のため、喪主さまや祭祀継承者さまへご相談し、ご許可をいただけるようでしたら、お粉にした後、ペンダント・ネックレス・指輪などに加工されてみてはいかがでしょうか。
イラスト/帰依剛龍