琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 墓じまいしますか？
週刊かふう2024年9月13日号に掲載された内容です。
墓じまいしますか？
Q：３年前、息子が20代で亡くなり、何人かのオガミサー（御拝者）を尋ねました。「あんたの息子は迷ってるよ～。グソーで結婚したい、子孫をつくって繁盛したいと泣いてるよ～。門中くらいの大きなお墓をつくり、この子を繁盛させなさい。それしか助からんよ～」と４人目のオガミサーから言われました。私たち夫婦には娘もいます。継承者のことを考え、それは無理だと伝えると、「なんで～、いいさ～。お墓つくって、３年後に壊して墓じまいしたら上等～。今、墓じまいは流行っているよ～」と言われました。墓じまい？ そんな無駄なこと……。私たち夫婦はどうしたらいいのでしょうか？ ちなみに、主人は次男でお墓なし、息子は私の実家のお墓に納め、母と二人で眠っています。（浦添市・Gさん・50代）
A：大切なご家族が亡くなることは身を切られる思いであり、年齢に関わらずとは申しますが、20代とお聞きするにつれ、より一層、悲しみが増します。アドバイスするオガミサーの先生の見識（本心）は存じ上げませんが、せめて、Gさんご夫妻の悲しみが和らぎますよう、丁寧に回答させていただきます。
沖縄のしきたりの『繁盛』『繁栄』
沖縄のしきたりには、オガミサーの先生がおっしゃる、チネーヌハンジョー（家庭の繁盛）やヤーヌサカイ（家の繁栄）など、『繁盛』や『繁栄』という考え方があります。人間、誰しも幸せになりたい思いは等しく、家庭（家）も家族も幸福でありますようにとの思いの表れだといいます。
オガミサーの先生のいわく、ご子息さまは、「グソーで結婚したい、子孫をつくって繁盛したいと泣いてるよ～」とのことですが、結婚や子孫以外、ご供養してあげるGさんご夫妻が仲良く、心安らかに日常を過ごすことも、チネーヌハンジョーやヤーヌサカイとなるのではないでしょうか？
また、『繁盛』や『繁栄』は、必ずしもお墓の大きさで決まるものではなく、この点、ミーサ（新仏）という喪中が明けて間もない遺族の方々への言葉かけは、沖縄のしきたりのオガミサーのプロとして、細心の配慮が必要かと思います。
墓じまいとは？
ここで、墓じまいについて触れておきましょう。オガミサーの先生がおっしゃる通り、沖縄でも墓じまいは、年々、増加する傾向にあります。墓じまいの理由は、お墓の継承者の不在、清掃などの管理が大変、居住地が遠方、お墓の地主からの返還の申し立てなど、多種多様の時代を迎えています。
墓じまいは、単にお墓を壊せば終わりと思われがちですが、必要な手順や手続きがあることはあまり知られていません。
一例を紹介しますと、
◎家族や親族の同意確認
◎お墓のフニシンガーミ（骨壺）やご遺骨の現状確認
◎ご遺骨の移動先の確認
◎お墓の管理者（宗教法人・公益財団法人）がある場合は事前に連絡
◎関係機関に連絡し、埋葬・埋蔵証明書、改葬許可証などを発行してもらう
◎ご寺院さまなどに連絡し、必要な供養をお勤めしていただく
◎石材店さまなどに連絡し、ご遺骨の移動やお墓の解体を行ってもらう
などがあります。
同時にご遺骨の移動先について、
◎別のお墓にご遺骨を納骨
◎管理型（宗教法人・公益財団法人）納骨堂・墓にご遺骨を納骨
◎永代供養
◎樹木葬（樹木や草花の下に納骨〈粉骨〉）
◎散骨（海や山に撒骨〈粉骨〉）
◎手元供養（自宅にご遺骨を安置）
など、いずれかを検討し、手続きを行います。
ンメーヌフチュクル（祖母の懐）
今回のGさんの回答としましては、ズバリ、現状維持でご供養されてみてはいかがでしょうか？ オガミサーの先生のアドバイスは気になるところでしょうが、親なればこそ、ご子息さまのことは一番、心の中に残られていることでしょう。Gさんご夫妻が、新しくお墓をつくり３年後に墓じまいすることが無駄なことに思えるのであれば、ご子息さまも思いは一つかもしれません。
沖縄では納骨のとき、沖縄のしきたりに詳しい方々（ご寺院さまや葬儀社さま）が担当しますので、ご子息さまの納骨のときも、Gさんのお母さまとご子息さまの名字が異なることを考慮し、タチーマジクイ（他系〈家〉の混合）とならないよう、ウンチケーする場所も配慮されているのではないかと思います。
沖縄のしきたりのウヤヌフチュクルのお言葉をお借りするならば、『ンメーヌフチュクル』ですので、ご子息さまからすれば、お祖母ちゃんと一緒、心強くも安心できる納骨ではないでしょうか。今は現状のまま、お二人を大切にご供養していただければと思います。
イラスト／帰依剛龍
