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琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A お棺に入れる白タオル

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A お棺に入れる白タオル

週刊かふう2024年11月15日号に掲載された内容です。

 

お棺に入れる白タオル

Q:先日、父が亡くなったとき、棺(ひつぎ)の中にたくさんの白タオルを入れました。おばさんたちは、「これはタンメー(祖父)の分、これはチャクシニイニイ(長男兄)の分」と言いながら入れていました。私は、汗かきだった父のハンカチ用だと思ったのですが、本当は、何のために白タオルを入れるのですか?(名護市・Hさん・40代)

A:Hさん、お父さまのご出棺、悲しみの中にも真心のこもったありがたいお見送りができましたね。沖縄では、お棺の中にたくさんのお土産を持たせてあげるしきたりがあり、白タオルを入れることも、お父さまやウヤファーフジ(ご先祖さま)にとって、大変意味深いお敬いになるといわれています。

お棺の中に白タオルを入れることは、沖縄固有のしきたりだと考えられがちですが、『祖先崇拝に琉球なし』『先祖崇拝に沖縄なし』ということわざにもありますように、その多くは、印度(インド)・中国などに由来することが知られています。諸説のうちの2説をご紹介させていただきたいと思います。


白タオルの由来・お布施説

 例えば、お父さまのお葬式のときに、お勤めいただいたご寺院のご住職さまに、お布施をお渡しされたかと思います。このお布施は、『お経料(お経を読んでいただいた料金)』ととらえるのではなく、お父さまやご遺族の皆さまにとっての布施の修行を表しています。

 その昔、印度・尼婆羅(ネパール)周辺では、他人へ財物・教養などを施し与え、悟りの妨げとなる自分の執着心から離れる修行を行っていました。施し与える財物に布を中心とする衣類も含まれていたことから、『布を施す=布施』となったとの逸話が残っています。

 沖縄では、お棺の中に白タオルの他、衣類を入れる理由の一つとして、故人さまが着用するためとの考え方がある一方、先立たれたウヤファーフジへ手向けるお土産との考え方もあるようです。

 手向けるお土産としての衣類は、性別・年齢などのによるデザインもあり、受け取るウヤファーフジがどの衣類を選ばれてもお喜びになるよう、万能に変化する衣類の象徴である白タオルを入れるようになったとおっしゃるユタなどの先生のご意見も耳にします。

 また、白タオルを衣類の生地と見立て、この白タオルでウヤファーフジにお好きな衣類を作ってくださいとの意味合いもあるのだとか。おばさんたちが、「これはタンメーの分、これはチャクシニイニイの分」と言いながら白タオルを入れていた理由が、わずかながらでも垣間見えるのではないでしょうか。

 本来は、布施の修行に由来する説ですが、そこから白タオルを手土産に見立てたり、生地に見立てたり、このありがたい解釈が、ウヤファーフジを大切にする沖縄らしいエピソードと言えます。

白タオルの由来・死装束説

 故人さまのお通夜・お葬式をお勤めされるとき、人生の終焉(しゅうえん)にはふさわしい服装があると考えられています。一説には、それを死(白)装束といい、概ね白色の衣類を中心に、故人さまを着付けていきます。通常は、右前になる経帷子は、高貴な方々と同じ左前にします。

 沖縄では、しまくとぅばで、グソースガイ(後生装束)という言葉があります。グソースガイの直訳は、「グソーへの着替え」という意味から、臨終からお通夜へ向け、またお通夜からご出棺へ向け、故人さまのご遺体をお着替えさせてあげることをいいます。今では、死装束そのものをグソースガイということもあります。

 昔の沖縄では、貴重な死装束がなかったとき、代用の品々で故人さまのお着替えをされていたとのお話も耳にします。その一つが同じ色の白タオルであったのだとか。お葬式の正装である死装束を象徴する白タオルは、見送るご遺族から見送られる故人さまへの愛情の象徴であったことでしょう。

 沖縄では、この白タオルに名前を書く光景をよく目にします。多分、誰からの白タオルとの意味合いなのでしょうね。Hさんのように、汗かきだったお父さまのハンカチ用だと思って入れることもとてもありがたいことだと思います。Hさんの白タオル、きっとお父さまのお役に立っておられることでしょう。

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