あなたの夢を暮らしを応援する
住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

ウェブマガジン

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 夫が愛用した服の処分

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 夫が愛用した服の処分

週刊かふう2025年7月11日号に掲載された内容です。

 

Q:夫が亡くなり7年、友人たちから、「いい加減、この服を処分しないと旦那さんがグソーに行けないよ!」と再三、注意されています。三度のご飯よりゴルフが大好きだった夫を想い、今でもゴルフウエアを仏壇の正面に飾っています。皆さん、どうやって服を処分しているのでしょうか?(那覇市・Tさん・80代)

A:Tさん、ご主人さまの服をウカザイ(お飾り)されていることは、愛情と偲ぶお心があってのこと、今日までよくご供養なされましたね。ご遺族の鑑であると深く感銘を受けております。また、Tさんは、ありがたいお友達をお持ちですね。悲しみの中にありながらも、新しい一歩を踏み出していただきたいお気持ちが伝わってまいります。
この衣服にまつわる伝統的な沖縄のしきたりから、グソーへ故人さまの衣服を『ウケーシ(お返し)』する、『ウムチ(お持ち)』いただく方法をご一緒に尋ねていきましょう。

衣服とマブイ(魂)

 大切な方がお亡くなりになったとき、沖縄では、マブイグミ(魂汲み・魂拾いなど)を行うことがあります。本来、必ず行うに近いしきたりだったそうですが、昨今、教える方々のみならず、経験すらされたことがない方々が増え、私が伝え聞くところでは、お葬式数の3割程度の実施との情報(現状)もあります。

 マブイは、一説にはイチマブイ(生き魂)とシニマブイ(死に魂)に分類されると言われています。このうち、お葬式やご法事などの前後、故人さまの落ちてしまったシニマブイに対応するための沖縄のしきたりが、マブイグミとする説が存在します。言い換えれば、故人さまの大切な忘れ物をお届けする沖縄のしきたりということになるのでしょう。

 忘れやすい場所として、故人さまが使用していた寝室(特に枕もと)・浴室・ナカジン(中陣〈広義では玄関〉)・ウジョー(門)・お亡くなりになられた場所などが挙げられます。また、忘れやすい物として、故人さまの愛用品などが挙げられますので、衣服もその一部として、マブイグミの対象になるのでしょう。

衣服の供養処分

 沖縄のとある地域の言い伝えでは、故人さまが亡くなられてからシンジュークニチ(四十九日)まで、愛用された衣服をナカジン・ウジョーなど人目につきやすい場所に掲げ、弔問・焼香に訪れる人々や道行く人々に、準備したウビィ(清水)を掛けていただくしきたりがあったのだそうです。お水でマブイを鎮めるという考え方なのでしょう。

 今から25年前、私が瀬底島のお葬式をお勤めさせていただいたとき、お墓のウコールイシ(香炉石)手前の入り口に、チョーサージ(故人さまのお名前やグソー極楽のお言葉が書かれた長い布。またはお棺の中の故人さまのお顔掛けの白い布)や故人さまが愛用された衣服を掛けていた様子を拝見したことがあります。

 ここでもチョーサージや衣服にお供えしているウチャトー(お茶・白湯)・ウサキ(お酒)を掛けていましたので、ウビィ掛けと同じような意味合いになるのでしょう。
当時、一連のしきたりが終わりますと、衣服はお墓で燃やして天にお届けする、お焚き上げの昇天供養を選択されていたことが思い出されます(現在は防火・環境保全の観点から、お墓で衣服を燃やさないよう配慮されています)。

 理想は一般的にいう、形見分けとしての衣服の継承で、故人さまが愛用された衣服をどなたかが使用していただければこの上ありません。このとき、塩水で清めてからお渡しすることも沖縄の地域・家庭によってあるようです。

 このような前例を踏まえ、今回、Tさんへのご提案として、昇天供養のアレンジを選択されてみてはいかがでしょうか?

 まず、ご主人さまのゴルフウエアの一部をほんの少しハサミで切り取り、その布をカビアンジャー(ウチカビを燃やすボールなど)の中で燃やします。次に、ウチャトー・ウサキを掛け、消火を確認後、残りの灰はヤシチ(屋敷)の土の部分にまく(埋める)という手順です。これでしたら、一部の衣服ではありますが、一部は全部との考え方から、残らず『ウケーシ(お返し)』する、『ウムチ(お持ち)』いただいたことになり、その後、残りの衣服はマブイグミが終了したものと見なし、安心して処分ができると考えられているようです。まもなく、ユンヂチが訪れますので、これもご主人さまへのありがたいご供養になろうかと思います。

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 夫が愛用した服の処分

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 夫が愛用した服の処分

このカテゴリの記事