僕の好きな風景 第59回 庭から家を考える
週刊かふう2022年5月6日号に掲載された内容です。
住宅の設計はどこから手を付けるか?……一般の方は、間取りから考えると思われる方がほとんどではないでしょうか?
実際はまず、敷地全体の使い方から押さえます。
車をどこに停めるか、次に玄関はどのあたりかという手順になります。
同時に日当たりのいい場所はどこか、視線が抜けるところはどの方向かなどあたりをつけていきます。
その後、要望にそったプラン(間取りと断面を同時に考える)に入ります。そして一般的には造園は最後になるものです。
しかし、今回は庭から家を設計した話をご紹介。熊本で設計した住宅の事例です。
設計に入る前に造園家の荻野寿也さんも一緒に現地調査に行った時、現地につくなり、荻野さんがいきなり設計を始めたのです(笑)。
「西側に山の稜線(りょうせん)が見えるから、それと庭の緑をつなげましょう」と荻野さん。それを受けて「それならカーポートは西にして、壁に格子をつけて町に庭をお裾分けしましょう」と返す。
さらに荻野さんが「西側の家が東に窓をつけていないので、お風呂をこちらへ作れば露天風呂のように窓開けっぱなしで入れますよ」と、さらに、「屋上緑化もやりたいですね〜」と続ける。
「緑化はリスクが高いからカーポートの屋上にしましょう」と応答し、「角地は角のあり方が大事なので魅力ある植栽をお願いします」と造園と設計の応酬を楽しみました。
この家のプランはそのやりとりがそのまま立ち上がったプランと言っていいでしょう。
造園は周辺環境と呼応しながら考えるので、庭から設計を始めるのも悪くありません、むしろ、住まい手のエゴが表出しない、ご近所に優しい佇まいとなるかもしれません。
遠くの山(遠景)と庭をつなげていった屋上のデッキ