僕の好きな風景 第61回 廊下の活用法
廊下の幅を広げ、多目的に使えるスペースを創った
週刊かふう2022年7月8日発行号に掲載された内容です。
「廊下のための廊下を作ってはいけない」と先輩たちから教わってきました。
「廊下の長い設計をする奴は設計が下手」とまで言われました。
単なる通路のためのスペースはもったいないということだと思います。
建物の中央付近に玄関や階段を設けると廊下が短くできるというのは設計の基本、できるだけそうしたいのですが、敷地の形や住まい手の要望で、必ずしもそうはいかないのが設計の面白いところ。
仕方なくでき上がってしまった廊下はうまく活用すればそれもまた楽しい。
この『近江・高島の家』(滋賀県)では廊下の幅を少し広く取り、廊下の片面に収納を設けて、廊下の行き止まりに小さな多義的に使えるスペースを創ってみました。
リビングルームにもつながるような居場所は廊下であり、収納スペースであり、隣にあるランドリー(洗濯室兼室内干し場)につながる、洗濯物を畳む場所でもあります。
さらに、昼寝コーナーでもあり、読書スペースでもあり、暮らしを支え、リビングをきれいに保つための多目的スペースになったと思います。
住まいのスペースには限りがあります。廊下も寸法を工夫すれば可能性が広がります。
裏方でありながら、もしかしたら最も楽しく、魅力的な居場所になったのではないでしょうか?
今回は床をタイルカーペットにしたのですが、畳にしても良いし、ベッド用のマットをはめ込んでも面白い。
廊下を活用することで、住まい手のとっておきのコージーコーナーに仕立て上げることができました。
廊下は空間に「抜け」と「広がり」をもたらし、風を通す役割もあるので大事に設計したいところです。
ダイニングの奥の左側がキッチンへの入り口、右が廊下となる
キッチンの奥にランドリーがあり、その横に多目的スペースがある