僕の好きな風景 第67回 網戸で覆われたバルコニー
網戸に囲われたバルコニーは玄関アプローチであり、バルコニーでもあり、多義的な役割を持つ
週刊かふう2023年1月6日号に掲載された内容です。
住宅デザイン学校の年末の恒例イベントは裏磐梯の「ホテリ・アアルト」合宿。今年も生徒さん達と訪れました。
このホテルは建築家・益子義弘さん(東京藝大名誉教授)の設計でリノベーションされたものです。「建築よし、温泉よし、風景よし、食事よし」の大好きなホテルの一つ。益子さんらしい優しいデザインに包まれて、優れた教材として設計の上達にも向くので住宅デザイン学校の合宿を毎年行っているのです。
本館と別館に加え、車で数分離れたところに「アアルト・ロッジ」(これもリノベ)があります。
小さな山小屋風の佇まいらしく、階段を上がり、バルコニーから玄関へ入るのですが、そのバルコニーが楽しい。外部空間なのですが網戸でぐるっと囲われているので、虫や蚊に悩まされることなく使うことができます。
自然風景を思いっきり取り入れながら、まるで室内でサッシュを開け放したような、あたかも室内にいるような錯覚に陥ります。
テーブルや椅子が置かれているせいかもしれませんが、半戸外のリビングとして活用しやすそうです。
今回は冬景色ですが、夏になると、その本領を発揮するバルコニーではないでしょうか。玄関への前室でもあり、バルコニーでもあり、お茶を飲み、食事もできる多義的で不思議な居場所……小さな小屋の魅力を倍増してくれるスペースだと思いました。
網戸に囲われているため、虫も蚊も気にしないで使えるところがいい
別の事例の木製建具仕立ての網戸のディテール