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僕の好きな風景 第70回 風流を極める

僕の好きな風景 第70回 風流を極める

臥龍山荘は農家を思わせるような茅葺の大きな屋根。内部は詫び寂びと華やかさが共存

 

週刊かふう2023年4月7日号に掲載された内容です。

 

 

 先日、愛媛県の建築士会に招かれて講演を行う機会を得ました。
 勧めもあって1泊し、翌日は愛媛県の名建築を訪ねるご案内に甘えさせていただくことに。
 ご案内いただいた大洲市に建つ数寄屋建築・臥龍山荘(重要文化財)は、初めて訪ねましたが心揺さぶられる建築。
 蓬莱山と肱(ひじ)川を望む景勝地に建ち、蓬莱山がまるで龍を伏せた形に似ていることから臥龍山荘と名付けられたそうです。

 建築家の黒川紀章さんが、京都の桂離宮にも劣らない建築と評し、借金をしてでも手に入れたいと申し出たほどの高い評価をしていたとのこと。
 黒川さんの著作の中で「花数寄」という言葉が出てきます。一般的に数寄屋とは「詫び、寂び」の世界なのですが、華やかさを持った数寄屋建築のことを「花数寄」と名付けていました。
 臥龍山荘はまさに「花数寄」……いや、「花数寄」と「詫び、寂び」が混在する粋な建築でした。

 沖縄に「ふーじ」(風儀)という言葉があります。
 社会的な常識を持ち、その地の慣習や価値観の中できちんとした様を表す言葉だと認識しています。
 臥龍山荘の臥龍は「我流」と置き換えても良いくらいに「俺流」……世間の眼は気にしない、わかる人だけわかれば良い、という意志を感じました。
 沖縄の「風儀」とは異なり、「風流」とはこのような心持ちなのだな? と思います。

 さて、自分の設計は良識のある「風儀」にとどまるか? もう少し歳をとって自分なりの「風流」の世界に踏み込むのか?
 そんなことを考えさせてくれる魅力ある建築でした。

僕の好きな風景 第70回 風流を極める

臥龍山荘の奥、臥龍淵に佇む不老庵 

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蓬莱山と肱(ひじ)川を望む、景勝地に建つ

僕の好きな風景 第70回 風流を極める

不老庵。まるで川の上に浮かぶかのような浮遊感

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