僕の好きな風景 第71回 繰り返して綾をなす
最も格式高い紫宸殿(ししんでん)の屋根を大きく持ち出すための小屋組
週刊かふう2023年5月5日号に掲載された内容です。
京都御所の近くで小さな家を設計させていただいています。
現場打ち合わせの前に、せっかくなので少し早起きして京都御所へ立ち寄ることにしました。
初めての京都御所は桜の満開時期とも重なり、期待以上に素晴らしく強い感銘を与えてくれました。
清所門から入り、決められたコースを自分のペースで外部から見ることができます。
見ることができるのは一部ではありますが、ゆっくり歩いていると2時間近くかかってしまうほど広く、美しく見応えのある建築と庭に圧倒されてしまいます。
明治2年に明治天皇が東京に移られるまで、約500年もの間住まわれていたのですから、あらためて京都の歴史の深みに思いを寄せるひとときでした。
見学のルートは、建築と庭の魅力を最も感じさせるような構成となっていて、日本建築は庭と一体となって景色や空間、移動する楽しみを創りあげているのだなと再認識することができました。
その中でも構造と装飾が一体となって繰り返す意匠に心惹かれました。
大きな屋根を創り出すための構造のパタン、柱と窓と壁を構成するパタンは繰り返して綾(美しい形や模様)をなす、素朴な日本的な美の形なのではないでしょうか?
繰り返すことは造りやすさにもつながりながら、建築のリズムや美しさも生み出す美の基本なのかもしれません。
紫宸殿の南庭の回廊
清涼殿の壁の構成
清涼殿の壁の構成、繰り返しが美しい