僕の好きな風景 第82回 窓は日常を浄化する
遠くが見えること、自然の変化を感じることは日常の浄化に大きく役立つ
週刊かふう2024年4月5日号に掲載された内容です。
窓の魅力と役割についてはこの連載でも何度か書かせていただきました。
日当たりや風通し、外の景色を楽しむためというのが一般的な役割。
最近は住宅が高性能化し、窓の性能は時に重視されるようになりました。
ここ5~6年の日本の住宅サッシュの性能の進歩は目覚ましいものがあります。
その影響で、住まいの省エネ意識が加速され、お風呂やトイレには窓はいらないと言う人が増えてきたように思います。
住まいの性能や省エネを重要視する住宅系ユーチューバーの影響がかなり浸透しているのは事実です。窓を減らし、小さくすれば、家全体の断熱性能は上がります。
しかし、真冬の晴れた日の南面からの日当たりは、室内から逃げる熱よりも、外部から入ってくる熱の方が大きく、省エネとしてはプラス方向へ働くので、東西、北面の窓は小さめにして、南面は大きな窓にするのが主流となっています。
省エネの正しい知識が広まること自体は良いことだと思いますが、窓にはもっと重要な役割があるように思えるのです。
例えば、僕は方位に関係なく、良い景色、視角が抜ける景色があれば窓を検討します。朝日が入るところと、西陽が楽しめるところ、空が望めて天気が感じられるところなど、省エネとは関係なく、窓のあり方は心地よく暮らすためのとても重要なことなのです。
「間取りは窓とりから……」とおっしゃる建築家もいます。
窓の考え方が間取りにつながり、住まいの根本的な心地よさに影響が出るのだと思います。
そして窓は日常の暮らし・気分を常に浄化してくれる装置でもあるのではないでしょうか?
もしかしたら、それが窓の最も大事な役割なのかもしれません。
空を見上げ、天気を感じることも意識を洗われる
足元の緑をちらりと見るだけでも外部の変化を感じ、気持ちがリセットされる