僕の好きな風景 第87回 森林の効用
軽井沢の森の下で暮らす。性能がしっかりした室内と森に癒される外部
週刊かふう2024年9月6日号に掲載された内容です。
今年の夏も猛暑続き……この時期に話題に上がるのが避暑地・軽井沢。
観光地としてのおしゃれな街中の人気もさることながら、一番の魅力は森の中の涼しさと空気、手軽に森林浴が味わえることではないでしょうか?
森林浴という言葉は1982年に林野庁が発表した「森林浴構想」がはじまり。
今やアメリカでも「shinrin-yoku」として定着した健康法です。
森の中の樹木の発する香りや成分に触れることで、リフレッシュ効果が得られるとされています。
そして最近は、建築界では「森林医学」という言葉を耳にする機会が増えました。
医学的にも森林浴効果が立証され、データがそろってきたようです。
森の中に居るだけでなく、緑あふれる庭に包まれて暮らすことや、室内に緑の鉢がいくつかあるだけでもリラックス効果があると言われています。
個人的には開口部の先に見える緑の光や、風に揺らぐ緑の影にもリラクゼーション効果を感じています。
また、「海水浴」という言葉も海のミネラルを体に浴びて皮膚を浄化させることであり、波の音、波の揺らぎ、潮風の皮膚に与える揺らぎなど、森に負けない医学的な効果がありそうです。
住宅の設計を生業としていて、住まいから「寒さ」を取り除くこと、「暑さ」を少ないエネルギー(エアコン)で解消することはできるようになりました。
さて、次のステップは「性能」の先の心地よさ……それは森の中で暮らすような、海を感じながら暮らすような、科学に裏付けされた自然の癒やし効果を取り入れていくことかもしれません。まずは住まいの中に、住まいの周辺に緑を取り入れていくことからか? と感じています。
写真は昨年、設計した軽井沢の家、森林浴三昧の住まいです。
外部には、外ご飯ができるデッキ空間やハンモック、森の木々を近くに感じる2階の小さなバルコニーなど、外部を楽しむ仕掛けがあちこちに