僕の好きな風景 第89回 規格住宅(提案住宅)の可能性
北海道産の素材で構成された家具と空間
週刊かふう2024年11月1日号に掲載された内容です。
先日、初めての北海道(当別町)で設計をした住まいをお引き渡ししてきました。
沖縄生まれの人間が北海道で住まいを設計できたことに感慨深いものを感じます。
この住宅は「i-works1.0」という建築家の考えた規格住宅(システム設計:伊礼智)で、ご当地バージョンとして北海道に合わせて性能を強化し、ご当地の素材や人材で作り上げた住まいです。
いつもならば、隅から隅まで伊礼智設計室のテイストとしてまとめ上げるのですが、「i-works」では僕が考えた設計を工務店やメーカーと共にリーズなコストで住まい手にお届けするプロジェクト。
昨年から積極的に各地方の工務店のモデルハウスの設計に取り組むことになり、北海道、秋田、石川、島根、香川、宮崎とさまざまな地域で仕事を進めています。北海道バージョンでは断熱性能を高めた上で、太陽光パネルを搭載し創エネを行い、さらに北海道で広がりを見せている「パッシブ換気」(電気とダクトを使わない自然換気)を取り入れ、気候変動で昨年あたりから必要となった冷房(壁掛けエアコン1台のみ)を組み入れて、北海道らしい全館空調にチャレンジしました。
建築素材も北海道産の珪藻土、杉、白樺、ナラ材などを多用し、家具デザインを地元の「旅する木」の須田修司氏、造園を「One & Nature」の川出健太郎氏とコラボ、地元の人材にも腕を奮っていただきました。
規格型住宅をベースに地元の工務店、職人、デザインナー達と創り上げる家づくりもなかなか楽しいものだと思えるようになりました。
規格住宅という、作り手からの提案型の家づくりは、気候変動・物価高騰時代における「ものつくり」の新しい可能性があるように思えました。
延べ床面積30坪のi-works1.0北海道バージョン
屋根には太陽光パネルも搭載、高性能の省エネ住宅
断面詳細図+空調換気システム図