僕の好きな風景 第90回 住み継がれる住まい
ソーラーシステムを搭載し、自然エネルギーで床暖房する省エネ住宅
週刊かふう2024年12月6日号に掲載された内容です。
30年前、修行した設計事務所で担当した住宅が売りに出されることになりました。
ご夫婦お二人の住まい、ご高齢となり自分たちだけでは暮らせなくなり家を手放すことになったのです。
25年を過ぎると、一般的には建物に価値はなくなり、土地の値段だけで売買されるのですが、海外のように、良い住まいはきちんと評価して、良き理解者に住み継いでもらうために、ある工務店が不動産を立ち上げ、仲介をする仕組みが出来上がりました。
この家(群馬県・吉井町の家)は当時としてはしっかりした断熱を施し、自然エネルギーを利用して床暖房するソーラーシステム(OMソーラー)を搭載、補助暖房としてポット式石油ストーブを利用して煙突からの排熱を回収して床暖房する工夫を施しています。
さらに、当時はまだ発売されていなかった珪藻土を内外壁に塗り込み、健康と環境に配慮した住まいなのです。
先日、販売促進のイベントと、多くの建築関係者にご覧いただこうと内覧会&ミニセミナーを開きました。
師である建築家・丸谷博男さんと不動産会社が主催、担当であった僕も協力という形でセミナーの講師を務めました。
30年経った住まいは建築も設備もびくともせず、まだまだ永く住める状況でした。
丁寧に作られ、性能がしっかりした家は価値が落ちないはずだと、参加者と共に確信できました。
建築の正しい価値を伝えていく不動産会社が増えてくれることを願い、彼らと共に自分たちが作り上げた建築を伝えていく活動を今後とも続けていきたいと思います。
古き良きものを大事に、直しながら住み続ける社会のために……。
外壁は珪藻土仕上げ、内外ともに自然素材で仕上げられている
吹き抜けたリビングルーム。高い断熱性と珪藻土の仕上げで体に優しい住まいとなっている