僕の好きな風景 第113回 椅子を楽しむ

奥村昭雄の家具の本。木の見方や制作過程まで楽しくまとめられている
週刊かふう2026年11月6日発行号に掲載された内容です。
建築家は椅子のコレクターとなる方が多い。
世界中の椅子を集めて住まいのあちこちに置いて、眺めて、座って、楽しむことを実践している方は少なくありません。僕もそんな暮らしに憧れつつも小さな自宅では、多くの椅子に囲まれる暮らしは夢と終わりそうです。
建築家の中には椅子を収集するだけでは満足できず、椅子を設計したいと思っている人も少なくないように思います。僕はと言えば、やりたい気持ちを抑えつつも、椅子の設計には手を出すまいと心に誓っています。

我か家のリビング。吉村順三や奥村昭雄の家具に囲まれて、学びつつ暮らしている
院生時代の恩師・奥村昭雄先生の椅子の原寸図面を見た時の衝撃は今でも忘れることができません。一枚の紙に平面図やら側面図、部分詳細図が重ねて書かれていて、とても理解ができない図面だったのです。こんな芸当はとても自分には不可能、設計と言う仕事に自分は向いていないのではないか? とも思えたくらいショックを受けました。
それ以来、椅子の設計だけは手を出しません。おそらく、のめり込んでしまうと人生の半分を費やしてしまうほど奥が深いと思うのです。特に木の椅子は木の素材に精通し、高い木工技術を持つ職人とコラボしなければ不可能……と言うわけで学生の頃に早々と建築の設計だけに専念することを決めました。椅子は小さな建築とも言われます。
素材や構造、手触りや座り心地など、総合的なデザイン力が要求されることがその理由です。
椅子の設計はやらないものの、椅子を愛でて暮らしてしていきたい。我が家には奥村先生の椅子とテーブルを中心に、吉村順三先生のたためる椅子や木の照明に囲われて暮らしています。


